研究課題/領域番号 |
19K16677
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
平松 裕之 藤田医科大学, 医学研究科, 研究員 (80623206)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ロタウイルス / ワクチン / 腸内フローラ |
研究実績の概要 |
本研究は、ロタウイルスワクチン接種により誘導される宿主免疫反応と腸内フローラの関連性に着目し、NICU入院中の早産児を対象としてワクチン接種後の便中ワクチン株排泄と宿主免疫応答に対する腸内フローラの影響を明らかにすることを目的としている。これまでに、保護者から文書同意が得られた40例の児に対し1価ワクチン(RV1)もしくは5価ワクチン(RV5)を接種し、接種児からの糞便と血清、母親から母乳を採取した。便からRNAを抽出し、便中ワクチン株RNAを、RV1特異的Real-time PCR法とG遺伝子型別RV5特異的Real-time PCR法を用いて定量的に解析した。また、血清についてはRV-IgG、IgA抗体価を、in-house ELISA法で測定した。一連の検体採取と上記測定が終了した双生児4組を含む17例について、血清抗体価と便中排泄量との相関を解析し、研究成績については、国内学会にて本研究成果を公表した。初回接種前に便中ロタウイルスワクチン株は検出されておらず、接種後の便中ワクチン株の推移には個人差がみられた。1回目接種後の便中ウイルス排泄量と血清抗体価の相関を解析した結果、便中ウイルス排泄量の多い群で、RV-IgG、IgA抗体価が高い傾向が見られたが、2回目の接種後便中ウイルス排泄量と抗体価の間に関連はみられていない。4組の双生児では、各双生児が類似したウイルス排泄パターンを示し、抗体応答も類似していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1価ワクチンもしくは5価ワクチンの接種対象者からの検体収集、マイクロバイオーム解析等のための検体採取について予定通りに進んでいるが、観察研究のため欠測がみられることから収集検体を追加して検討を進めている。抗体測定と便中ワクチン株RNA定量の解析から、ワクチン投与前の液性免疫、特にIgA抗体価が高いと小腸でのワクチン株増殖が抑えられ抗体誘導能が低下する可能性を示唆する結果が得られている。2020年度においては国内学会(日本ワクチン学会など)にて本研究の現在までの成果について公表した。一方で、マイクロバイオーム解析について、双生児の腸内環境の類似性が認められたが、RVワクチン接種による宿主免疫応答と腸内環境との関連性について未解析である。
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今後の研究の推進方策 |
1. 2020年度に引き続き、追加の母乳・血清・糞便のサンプリングを継続する。 2. 血清抗体価の測定、便中ワクチン株の定量及び遺伝子型判別を行う。 3. マイクロバイオーム解析: 次世代シーケンスを行い、16S rRNAの配列を取得。得られた配列から解析ツールを用いて16S rRNAデータベースから系統分類解析や相同性検索を行うとともに、各検体の細菌叢の比較を実施する。 研究成績について、国内、国際学会で本研究成果を公表し、最終的に英文誌へ投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
収集した検体についてリアルタイムPCR測定、ELISA測定、NGS解析を実施するするため、関連する試薬等の消耗品の購入にあてる。 また、2020年度はマイクロバイオーム解析を行い学会発表するには至らなかったため、データに関する研究打ち合わせ等を含め、それら旅費にあてる。
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