研究課題
申請者は昨年度までに、STZ誘導性の1型糖尿病モデルマウスに、ネズミの腸管寄生線虫Heligmosomoides polygyrus (H. polygyrus) を感染させると、β細胞の破壊、インスリンレベルの低下、血糖上昇が見られず、T1Dが抑制されること、その抑制にはCD8陽性T細胞(CD8Treg)が重要であることを見出した。さらに、抗生剤をマウスに投与する実験から、そのCD8Tregの誘導には腸内細菌が関与している可能性があったため、CD8Tregの増減と腸内細菌の増減との相関解析を行うと、CD8Tregの増加に関わる腸内細菌Ruminococcus gnavusを同定した。実際に、R. gnavusをマウスに投与することでCD8Tregが誘導でき、T1Dの発症が抑制されることを明らかにした。本年度は、H.polygyrus感染マウスの小腸内容物を回収し、GC/MSを用いて代謝産物について網羅的に解析したところ、H.polygyrus感染マウスの小腸内ではトレハロース が顕著に増加していることを見出した。そこで、トレハロース をマウスに投与すると、R. gnavusが増殖し結果的にCD8Tregを増加させている可能性が示唆された。さらにこのトレハトースはH.polygyrus自身が分泌していることも確認できた。これら全ての結果から、寄生虫感染による自己免疫疾患の抑制には、寄生虫が分泌する物質により変化した腸内細菌が関与しているという一連の流れが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的通り、寄生虫感染による自己免疫疾患の抑制メカニズムの一端を明らかにすることができた。
CD8Tregの増加にはR. gnavusが重要であることは明らかになったが、R. gnavusがどうやってCD8Tregに刺激を与えているのか、その物質や受容体は不明のままである。今後はR. gnavusの代謝物に着目し、さらに研究を進めたい。
COVID-19の影響で予定していた学会が中止になったため。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
BMJ Open Respir Res
巻: 1 ページ: -
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