これまでにHp感染によって誘導されたCD8TregがT1Dの発症を抑制することを明らかにしており、本申請ではT1Dの発症抑制に関わるCD8Treg誘導メカニズムの全貌を明らかにするために、下記4つの観点から、Hp感染マウスの腸内環境を網羅的に解析した。1)Hp感染マウスでの腸内細菌叢の解析:Hp感染マウスと非感染マウスとでは、腸内細菌叢が大きく異なることが明らかとなった。2)Hp感染マウスの腸内細菌除去によるCD8Treg誘導への影響について:抗生物質の投与により腸内細菌をある程度除去するとCD8Tregが誘導されなかった。この結果からCD8Tregは腸内細菌によって誘導されることが示唆された。3)CD8Treg活性化に関わる腸内細菌の同定:次世代シーケンサーによる解析により、CD8Tregの増加に関与する腸内細菌Ruminococcusを同定した。4)Hp感染マウスの小腸内容物のメタボローム解析:Hp感染マウスの小腸ではトレハロースが増加していることが明らかになった。そしてそのトレハロースは、Hp自身が分泌していることが分かった。 全てをまとめると、Hp感染によるT1Dの発症抑制はHpがトレハロースを分泌することにより腸内細菌Ruminococcusが増加し、そのRuminococcusがCD8Tregを誘導していることが明らかになった。
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