研究課題
免疫系における遺伝子転写のエピジェネティックな制御は、正常および病的な炎症を適切に制御するために重要である。エピジェネティックな修飾の代表例は、DNAシトシンのメチル化とヒストン修飾であり、これらの異常は、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞の機能異常ひいては病的な炎症や自己免疫疾患を引き起こす。哺乳類ゲノム中のCG配列の70-80%はシトシンメチル化を示し、遺伝子発現の抑制を担う機構として広く認知されている。システイン(C)を多く含むCxxCドメインは、非メチル化CG配列に結合し、様々な転写調節因子と相互作用して、エピゲノムの制御を行う。これらのCXXC1ドメインを持つ分子の中で、最初に同定されたCxxCドメインを持つタンパク質であるCXXC1は、非メチル化CG配列に結合することも明らかとなっている。我々は、このCXXC1に着目しその免疫系における働きを解析した。CXXC1はヒストンH3K4メチル化酵素SETD1A/Bと相互作用し、ES細胞における遺伝子制御に関わることが知られていたが、免疫系における働きについてはほとんど報告がなかった。我々は、CXXC1がT細胞受容体(TCR)及び共刺激受容体(coreceptor)からの刺激によってオンオフが制御される遺伝子群の制御に重要であることを突き止めた。特に、Th2において、CXXC1依存的に制御される遺伝子が、CXXC1を含むヒストンH3K4メチル化酵素複合体を介して分化後期に遺伝子発現を再上昇させることで、Th2細胞の過剰な分化を抑制し、適切な分化に誘導する新規の分化制御機構を明らかにした。また、Cxxc1欠損マウスでは、Th1細胞およびTh2細胞の両方を介する好中球・好酸球混合型の病的炎症が増強されることを示唆し、CXXC1は、抗原特異的なTh1およびTh2細胞の適切な分化を制御することで、病的炎症を抑制していることが明らかとなった。本年度、これらの結果をまとめ、Kiuchi et al., J Exp Med. 2021に報告を行った。
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