研究課題/領域番号 |
19K16685
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 亮太 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (90779703)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然免疫 / ウイルス / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
2本鎖RNAセンサーであるToll like receptor3(TLR3)は免疫細胞だけでなく線維芽細胞、神経細胞など多岐にわたる細胞に発現しウイルス感染に対する生体防御を行っている。我々は、これまでに代謝センサーmTORの複合体であるの一つであるmTORC2が自然免疫受容体TLR3の応答制御機構のマスター遺伝子であることを示した。しかし、mTORC2は何を認識しているのか不明瞭であり、研究が進んでいなかった。本研究では、TLR3応答をアウトプットにしてmTORC2の脂質センサーとしての機能を解明することを目的として研究を進めている。 研究を進めるにあたり、de novoでの脂肪酸合成経路と外部からの脂肪酸の取り込みの2点に着目して研究を進めている。 CRISPR/Cas9による機能低下型のスクリーニングを行い、TLR3応答に必要な分子としてde novo脂肪酸合成に必要な遺伝子が同定された。また、脂肪酸合成酵素であるFasnの阻害剤はTLR3依存的なmTORシグナルの低下を引き起こし、サイトカイン産生を顕著に減少させた。これらのことから、TLR3-mTORシグナルにおける細胞内脂肪酸合成経路の重要性が示唆された。 また、阻害剤により低下したTLR3応答(サイトカイン産生、刺激依存的な細胞内以降)を飽和脂肪酸が回復させることが示唆された。飽和脂肪酸はTLR3依存的なmTORシグナルの活性化についても回復させたことから、脂肪酸の外部からの取り込みもTLR3-mTORシグナルに寄与することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
gRNAライブラリースクリーニングや阻害剤を用いた実験により、TLR3-mTORシグナルにおけるde novoでの脂肪酸合成経路の重要性が示された。また、脂肪酸を培地に加え、TLR3応答を評価した実験により、細胞外からの飽和脂肪酸取り込みがTLR3応答に寄与することが示唆された。このように脂肪酸がTLR3-mTORシグナルに関与するという結果が得られ得てきている。さらに、今後用いるマウスのウイルス感染実験についても、すでにTLR3欠損マウスが感受性になることを検証済みである。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、脂肪酸自体がTLR3-mTORシグナルに重要であることがわかってきた。 さらなるメカニズムを解明するために、以下のことを検討している。 mTORC2は、活性化されたTLR3と会合することは以前示している。その会合における脂肪酸の役割を検討するために、C75処理、脂肪酸除去、添加した場合のmTORとTLR3の会合を検証する。また、脂肪酸自体がmTORやTLR3に結合するかどうかビオチン化した脂肪酸を用いた免疫沈降によって、これらの分子と脂肪酸の結合を検討する。 さらに、脂肪酸とmTORとの相互作用において、関与する分子についても検討する。我々は、脂肪酸の細胞内移行や安定化に関与する脂肪酸結合タンパク質 (FABP) ファミリーに注目している。それぞれのノックアウトまたは強制発現線維芽細胞株を作成し、TLR3応答を検討する。また、FABPとTLR3の会合についても検討を行う。
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