研究課題/領域番号 |
19K16694
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸橋 拓海 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (60743961)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント分子 / LAG-3 / がん免疫 / ヘルパーT細胞 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果が証明されて以降、がん免疫療法は大きな注目を集めている。しかしながら、その奏功率は30%程度と決して高いとは言えず、依然として解決すべき課題が多く残されている。これまでに抑制性免疫補助受容体のひとつであるLymphocyte Activation Gene-3(LAG-3)が構造特異的にMHC class IIを認識することでCD4陽性ヘルパーT細胞(Th細胞)応答を選択的に抑制することを見出している。そのため、LAG-3を標的とすることでTh細胞の活性化を特異的に制御できると考えた。本研究では、これまでのがん免疫療法においてあまり注目されてこなかったTh細胞およびLAG-3に焦点を当て、がん免疫におけるTh細胞活性化制御機構の解析、そしてTh細胞の活性化制御による新規がん免疫療法の開発を目指す。 当該年度はまず、がん免疫応答におけるLAG-3およびTh細胞の関与を検証した。具体的には、野生型およびLAG-3遺伝子欠損C57BL/6またはBalb/cマウスにモデル抗原を発現させたがん細胞株を皮下移殖した後、モデル抗原をアジュバンドとともに複数回皮下投与し、腫瘍の大きさを経時的に計測した。その結果、LAG-3遺伝子欠損マウスにおいて複数のがん細胞株の増殖の有意な抑制が認められ、LAG-3阻害によってワクチン効果が増強されることが明らかとなった。また、腫瘍浸潤CD4陽性Th細胞についてフローサイトメトリーによって解析したところ、LAG-3遺伝子欠損マウスにおいて、CD8陽性細胞障害性T細胞の活性化に重要とされているIFN-γを産生するTh1細胞が野生型に比べて増加していることを見出した。以上のことから、がん免疫応答においてLAG-3およびTh細胞が重要な働きをしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、LAG-3およびTh細胞のがん免疫応答における機能を解明し、新規免疫療法の開発につなげることを目的とする。これまでに、LAG-3およびTh細胞が関与するがん免疫実験モデルが複数得られており、順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、LAG-3によるがん免疫応答制御が顕著に認められる実験系の確立に成功した。そこで、抗CD4抗体投与によるCD4陽性T細胞の除去を行うことで、がん免疫応答へのTh細胞の関与を検証する。また、この実験系を用いて、LAG-3阻害抗体によるがん特異的Th細胞賦活化と抗腫瘍効果の検討を行う。もし効果が認められない、または弱い場合には、PD-1阻害抗体投与を同時に行い、その相加・相乗効果を検証する予定である。以上の研究を通して、がん細胞がLAG-3を介して免疫監視を回避する新たなメカニズムが明らかにし、効果的な新規がん免疫療法の確立につながることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中に所属機関の異動があったことから、当初当該年度に実施する予定であった動物実験の一部を次年度に行うことになった。これにより生じた次年度使用額は当初の計画通り、抗体精製関連試薬およびマウスの維持管理および購入のために使用する予定である。
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