研究課題/領域番号 |
19K16695
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
幸脇 貴久 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (90780784)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自然免疫 / TBK1 / lncRNA |
研究実績の概要 |
自然免疫は、ウイルス感染初期の生体防御に必須の働きをし、また、獲得免疫系の惹起にも必須である。本研究は、独自に同定した新規分子群について、ウイルス感染時の自然免疫応答に果たす役割を解明し、ウイルスに対する自然免疫応答の新たな分子機構を解明することを目的とする。本研究では、RIG-I依存的な自然免疫経路に関わる新たな因子として申請者が独自に同定した、TANK-Binding Kinase-1(TBK1)と相互作用する新規分子群に焦点を当て、自然免疫に於ける未知のメカニズムを解明することを目的とする。 申請者はTBK1と相互作用する新規分子群を同定する為に酵母two-hybrid 法を用いたスクリーニングを行い、複数のlong non-coding RNA(lncRNA)を単離した。ヒトゲノムから作られるRNAはncRNAが90%を占めている。興味深いことに、lncRNAから翻訳されたペプチドがショウジョウバエやゼブラフィッシュにおいて機能性ペプチドとして働いていることや、哺乳類由来のlncRNA由来ペプチドが、mTOR1および筋の再生を制御することが報告されている。これらは、lncRNAから翻訳されるポリペプチドが臨床や治療に重要な因子であることを示している。 こうした経緯を踏まえ、申請者は免疫応答においてもncRNAが重要な役割を果たしているのではないかと考えた。同定されたlncRNAのORFと予想される部位をクローニングし、スモールペプチドとTBK1との相互作用を免疫沈降法と共焦点顕微鏡を用いた局在観察で確認した。さらに、TBK1を介したI型インターフェロン誘導をレポーター法で検討したところ、lncRNA由来のスモールペプチドはTBK1のシグナルを増強することが分かった。 こうした結果を踏まえ、今後はTBK1のシグナルにおけるスモールペプチドが果たす役割を詳細に検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、lncRNA由来のスモールペプチドが自然免疫を制御しているというコンセプトで研究を進めているが、本研究で同定されたlncRNA由来のスモールペプチドが実際に培養細胞もしくは生体内で翻訳されて存在しているのかということを証明することに時間を要している。 それと並行して、タンパク質発現系を用いた実験を行っている。この実験系では今回同定された分子はフェノタイプがあるので、TBK1の活性化に関与する分子メカニズムについて今後検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で同定されたTBK1と相互作用するlncRNA由来のスモールペプチドが実際に生体もしくは培養細胞中に存在すること確認する。そのため、標的遺伝子に対して、CRISPRシステムを利用したTagタンパク質のノックインを行い、ウイルス感染刺激などでスモールペプチドが翻訳されているか確認する。それと並行して、高感度の質量分析機を用いてスモールペプチドの存在を確認することも検討している。 また今後は、TBK1と結合することが確認されたスモールペプチドがTBK1のリン酸化やTBK1と相互作用することが知られているその他の分子に及ぼす影響について、詳細に検討する。
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