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2019 年度 実施状況報告書

苦味物質が及ぼすケモカイン受容体を介した免疫細胞遊走への影響

研究課題

研究課題/領域番号 19K16697
研究機関新潟大学

研究代表者

小林 大地  新潟大学, 医歯学系, 助教 (50805752)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード細胞遊走 / 味覚受容体 / ケモカイン受容体 / 炎症
研究実績の概要

「良薬は口に苦し」のことわざにあるように、古くから人々は苦い薬には良い治療効果があると信じてきた。しかしながら、苦味伝達経路と治療効果の関係は十分に解明されていない。苦味物質は主に taste 2 receptor (T2R) を介して苦味と認識される。近年の解析から苦味物質が免疫系に影響することが示唆されており、T2R を介した免疫応答調節機構の存在が想定されている。
そこで、私はリンパ組織等から免疫細胞を単離し、T2R 発現を解析した。その結果、3種類の T2R サブタイプ(T2R126, T2R135, T2R143)が好中球に発現することを確認した。次に、苦味物質が好中球遊走に及ぼす影響を9種類の苦味物質を用いて in vitro で検討した。その結果、CXCR2 依存的な好中球遊走を①阻害する苦味物質、②影響しない苦味物質、③促進させる苦味物質に分類可能であることが明らかとなった。次に、腹膜炎モデルマウスを用いて、苦味物質が炎症部位への好中球浸潤に影響するかを検討した。その結果、好中球遊走を促進させる苦味物質は腹腔への好中球浸潤を亢進させ、好中球遊走を阻害する苦味物質は腹腔への好中球浸潤を抑制した。
次に、好中球様細胞株(32Dcl3)を用いて苦味物質が及ぼす細胞遊走への影響を解析した。その結果、32Dcl3 では苦味物質による細胞遊走促進効果が再現できなかった。そこで、32Dcl3 における 3種類の T2R 発現を解析した。32Dcl3 ではこれら T2R の発現レベルが好中球と比較して低いことが明らかとなった。以上のことから、苦味物質は特定の T2R を介して好中球遊走を促進させることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画は概ね予定通りに推移したが、好中球様細胞株では好中球で得られた苦味物質の影響が部分的に再現できなかった。この原因は好中球と比較して、好中球様細胞株の T2R 発現レベルが低いためであることが想定された。そこで当初予定していたCRISPR-Cas9 法により T2R 欠損細胞株の樹立ではなく、T2R 強制発現細胞株を用いた解析の必要が生じている。

今後の研究の推進方策

今年度最初に、レトロウイルスを用いた T2R 強制発現細胞株を樹立する。その後、T2R 強制発現細胞株では苦味物質による好中球遊走への影響が再現できることを確認する。また、苦味を有する薬物を用いて、これらが T2R を介して細胞遊走を調節するかを検討する。また、苦味物質が及ぼす好中球遊走への影響メカニズムを明らかにすることを目的に、CXCR2 ホモ二量体形成・CXCR2 下流のシグナル分子(Gαi の活性化・Rhoファミリータンパク質)に着目し、解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

初年度、CRISPR-Cas9 を用いて、新たに導入した好中球様細胞株(32Dcl3)の T2R 欠損株樹立を計画していたが、32Dcl3 では好中球のように T2R を高発現することが確認できなかった。また、32Dcl3 では好中球と同様な苦味物質による細胞遊走への影響も確認できなかった。これらのことから、計画を変更し、T2R 過剰発現細胞株の樹立に変更した。この実験計画に変更した時期が研究代表者の異動時期と重なってしまい、さらに T2R 過剰発現細胞株の樹立はP2レベルの遺伝子組換え申請を必要とし、変更後の実験がスムーズに進まなかった。これらが原因で差額が生じてしまった。今年度、差額の予算を用いて、T2R 過剰発現細胞株の樹立並びに、機能解析を行う。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Insufficient efferocytosis by M2-like macrophages as a possible mechanism of neuropathic pain induced by nerve injury.2020

    • 著者名/発表者名
      Daichi Kobayashi, Norikazu Kiguchi, Fumihiro Saika, Shiroh Kishioka, Shinsuke Matsuzaki
    • 雑誌名

      Biochemical and biophysical research communications

      巻: 525 ページ: 216-223

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.bbrc.2020.02.032

    • 査読あり
  • [学会発表] Efferocytosis mediated anti-inflammatory responses are restricted at the site of peripheral nerve injury2019

    • 著者名/発表者名
      Daichi Kobayashi, Norikazu Kiguchi, Fumihiro Saika, Shiroh Kishioka, Shinsuke Matsuzaki
    • 学会等名
      第17回 国際免疫学会2019
    • 国際学会
  • [備考] Reserachmap

    • URL

      https://researchmap.jp/kobayashi1988/published_papers

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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