研究課題/領域番号 |
19K16697
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小林 大地 新潟大学, 医歯学系, 助教 (50805752)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 苦味受容体 / ケモカイン受容体 / 細胞遊走 / 好中球 |
研究実績の概要 |
昨年度までに、Tas2R126/143 アゴニストが好中球遊走を促進させることを見出し、さらに Tas2R126/143 アゴニストがザイモサン誘導性の腹腔への好中球浸潤を亢進させることを明らかにしてきた。加えて、32Dcl3 細胞株由来の好中球様細胞株では Tas2R126/135/143が欠損し、この細胞株では Tas2R126/143 アゴニスによる細胞遊走促進効果が確認できないことを見出していた。 本年度は 32Dcl3 細胞に Tas2R126/135/143 を強制発現させた細胞株を樹立し、これら細胞株を用いて Tas2R126/143 アゴニストによる好中球遊走促進効果の再現を目指した。また、Tas2R126/143 アゴニストによる好中球遊走促進機構の作用機序の解明を進めた。 他家の報告で苦味受容体を強制発現させる際、苦味受容体の N 末端にソマトスタチン受容体の N 末端領域(SSTR3)を付加させることが細胞膜上での安定発現に必要であると報告されている。そこで、SSTR3を挿入した V5-SSTR3-Tas2R126発現プラスミド等を構築し、一過性に HEK293 T 細胞に発現させ、フローサイトメトリー法により解析した。その結果、V5-SSTR3-Tas2R126等が細胞膜で発現することが確認できた。次に、これらインサートをレトロウイルス用の pCX4bsrプラスミドに移し替え、レトロウイルスを用いて 32Dcl3 にV5-SSTR3-Tas2R126等を導入し、薬剤選択を行った。しかし、これら受容体を細胞膜上で発現する細胞株が得られなかった。次に、Tas2R126/143 アゴニストによる好中球遊走促進機構について解析した所、Tas2R126/143 アゴニストが CXCR2 依存的な ROCK→MLC シグナリングを亢進させることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Tas2R126 等を一過性に発現させる実験系の構築や Tas2R126/143 アゴニストによる好中球遊走促進の作用機序の一端を明らかにすることはできたが、当初の予想に反してレトロウイルス・薬剤選択を用いて Tas2R126/135/143 発現好中球様細胞株の樹立ができなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Tas2R126/135/143 を欠損するマウスの作製を進めており、現在ヘテロ欠損マウスまで得られている。ホモ欠損樹立後、ホモ欠損マウス由来の好中球では Tas2R126/143 アゴニストによる好中球遊走促進効果が消失することを確認する。また、ホモ欠損マウスでは、Tas2R126/143 アゴニストによるザイモサン誘導性好中球浸潤の増強や CXCR2 依存的な ROCK→MLC シグナリングの亢進が消失することを確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Tas2R126/135/143 発現好中球様細胞が上手く樹立できなかったため、予定していた実験系の変更の必要が生じた。今年度、現在作製している Tas2R126/135/143 欠損マウスを用いた解析を計画しており、これらマウスを用いて、Tas2R126/135/143 と好中球の関係を好中球遊走解析、ROCK→MLCシグナリングの解析、ザイモサン誘導性の好中球浸潤解析により明らかにする計画である。
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備考 |
第94回日本薬理学会 優秀発表賞受賞
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