苦味受容体(Tas2R)は口腔内に発現し、口腔内に侵入してきた苦味物質を認識することが知られている。近年の解析から Tas2R が口腔外にも発現することが見出され、その機能的意義が注目されている。これまでに、好中球に Tas2R126、Tas2R135、Tas2R143 が発現することを発見している。in vitro による好中球遊走の解析から、Tas2R126/143 アゴニスト(アルブチン、サリシンなど)が好中球遊走を亢進させることを明らかにしている。また Tas2R126/135/143 欠損マウス(TKO)由来の好中球を用いた解析から、アルブチンによる好中球遊走亢進が消失することを見出し、Tas2R126/143 シグナリングが好中球遊走を促進させることを裏付けている。さらに、Tas2R126/143 シグナリングによる好中球遊走亢進の分子機構に ROCK→MLC 経路が関わることを見つけ出している。加えて、ザイモサン誘導性の腹膜炎モデルマウスによる in vivo 解析から、アルブチンがザイモサン依存的な腹腔への好中球動員を亢進させることを解明している。しかしながら、in vivo で観察されたアルブチンによる好中球動員亢進に Tas2R126/143 が寄与するかは不明であった。そこで、TKO を用いて、アルブチンによる好中球動員亢進が消失するか?を検討した。予想に反して、TKO ではアルブチンによる好中球動員亢進が消失しなかった。これらのことから、アルブチンによる好中球動員亢進は Tas2R126/143 非依存的であることが示唆された。
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