研究実績の概要 |
Granzymeはアポトーシス誘導などを介して標的細胞に障害性作用を及ぼすエフェクター分子であり、主にCTLが産生する代表的なプロテアーゼである。本研究では腸管におけるGranzyme産生細胞を解析してその生理的意義を検証する。マウスは10種類のGranzyme遺伝子(Gzma-g,k,m,n)を保持していて、10番染色体にm、13番染色体にkおよびa、14番染色体に残りのb,c,f,n,g,d,eが位置する。このうち特異的抗体が入手可能なGzmA,B,Mについて、腸管粘膜固有層における産生細胞をフローサイトメトリーにより解析したところ、GzmAならびにB陽性細胞が多数局在していた。その細胞数の内訳は、TCRβ+CD8T細胞が最も多く、ついでNKを含むILC1(NK1.1+)細胞、TCRγδ+細胞に加え少数のTCRβ+CD4T細胞も発現していた。大腸の細胞について詳しく解析したところ、それぞれの細胞により発現パターンが異なっていた。具体的にはCD8T 細胞はGzmB産生集団が多く、その約半分のポピュレーションは同時にGzmAも産生していた(GzmB単陽性およびAB両陽性)。一方、NK1.1+細胞はGzmAのみを産生する細胞が殆どであった(GzmA単陽性)。TCRγδ+細胞はGzmA産生集団が多く、その半分以上がGzmBも産生する両陽性細胞であった(GzmA単陽性およびAB両陽性)。次に、これらのGranzyme産生細胞に対する腸内細菌の関与を調べるために無菌マウスを解析したところ、CD8TとTCRγδ+細胞のGzyme産生はABともに消失していた。一方でNK1.1+細胞の産生は2/3から半減するものの保持されていた。このことから腸内細菌がCD8T細胞やTCRγδ+細胞のGranzyme産生を誘導する一方で、NK1.1+細胞の産生には関与が低いことが明らかとなった。
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