研究実績の概要 |
肺炎球菌やサルモネラ菌に対する感染症は、乳幼児や高齢者において罹患率が高く、髄膜炎や敗血症などの併発によって重篤化しやすい。これらの菌は細胞壁外に莢膜を持ち、B細胞抗原受容体(BCR)を高度に架橋して、T細胞からの補助刺激なしでB細胞を活性化して抗体産生を誘導する。このようなT細胞非依存性 II型(T cell independent type II, TI-II)応答によって産生される抗体は感染防御に重要であるが、その抗体産生誘導機構には不明な点が多い。そこで本研究ではTI-II抗原によるB細胞の活性化機構を明らかにし、その分子機構に基づいたより効果的なワクチン療法の開発を目指す。 本年度の研究では、T細胞依存性(T cell dependent, TD) 抗原とTI-II抗原で刺激した際にBCRに会合する分子の解析を行い、TI-II抗原刺激した際のみにBCRに会合する二つの分子を同定した。さらに同定した分子をノックダウンしたB細胞ではTI-II免疫応答における増殖が著しく低下することから、同分子がTI-II抗原によるB細胞の活性化に重要な分子であることが示唆された。また以前に同定したTI-II免疫応答に重要だと考えられる分子, DNaseγおよびPKCδを欠損するマウスに肺炎球菌ワクチンPneumovax23(PPSV23)を免疫し、抗体産生を解析した。DNaseγ欠損マウスではPneumovax特異的なIgM抗体価が減少し、PKCδ欠損マウスではIgG抗体価が減少した。これらの結果から、DNaseγおよびPKCδが肺炎球菌に対する感染防御に必要である可能性が示唆された。
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