ADP-ribosylation factor(Arf)ファミリーは、小胞輸送を制御する低分子量Gタンパク質でArf1-Arf6の6つのアイソフォームが存在する。研究代表者は、T細胞におけるArfの生理機能を解明するために、末梢T細胞において高い発現を示すArf1とArf6に着目し、T細胞特異的Arf1/Arf6二重欠損マウス(以下、Arf1/6-KOマウス)を樹立した。T細胞機能に関する各種解析を行ったところ、T細胞依存性の抗体産生など大部分の機能はコントロールと同等であったのに対し、クローン病のモデルとして知られるナイーブCD4+ T細胞移入大腸炎モデルにおいて、Arf欠損 T細胞を移入したマウスおける大腸炎がコントロールと比較して著しく抑制されることを見出した。クローン病を代表とする自己免疫疾患は二種類あるうちpathogenic Th17細胞が原因となって引き起こされることが知られているため、Arf経路を介したpathogenic Th17細胞の分化・維持機構について解析を行った。その結果、予想に反し、pathogenic Th17細胞への分化能・生存維持のいずれにおいてもコントロール細胞とArf欠損細胞で有意な差は認められなかった。一方で、Arf欠損ナイーブCD4+ T細胞はTCR刺激による活性化において、Bcl-2ファミリーの発現バランス異常を伴うアポトーシスが亢進していることが明らかになった。さらに、大腸炎と同じくpathogenic Th17細胞の関与が知られる自己免疫疾患の一つである多発性硬化症のモデル(EAE)においても、Arf1/6-KOマウスにおいて病態が著しく抑制されていた。
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