研究課題/領域番号 |
19K16703
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
君塚 善文 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 内科学, 講師 (40445268)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ワクチン / インフルエンザ / アジュバント / レーザー / 近赤外光 |
研究実績の概要 |
本研究は、近赤外光の粘膜への照射がインフルエンザ粘膜ワクチンのマウスモデルにおいて免疫賦活化効果を示すことを検証し、効果的かつ安全性の高いワクチンアジュバントとして確立することを目的としている。 現在、予防接種に使用されるワクチンの多くは免疫原性が低く、アジュバントの混合を要するが副作用も知られている。そこで本研究では、申請者らが既に皮膚照射モデルにおいて示した近赤外光によるアジュバント効果を応用し、舌下粘膜ワクチンにおける有効性を検証する。非触・非侵襲的な光により粘膜ワクチンの作用増強効果が示されれば感染症予防において広く社会に役立つ可能性がある. 今年度は、近赤外光を照射する部位として開口保定したマウスの舌下粘膜に連続波Nd:YVO4レーザーと光ファイバーを用いて1064nmの近赤外光を照射する系を確立した。組織障害を起こさない最大照射照度を同定するため、照射中の表面温度を測定・記録しつつ、照射後の肉眼的変化および組織学的な評価を行った。照射による温度変化は想定よりも小さく、粘膜は血流などの影響をうけて皮膚よりも熱容量の大きい部位である可能性が示唆された。この成果に基づき、今後、近赤外レーザーの粘膜照射の液性/細胞性免疫応答に対する増強効果の検討、マウスインフルエンザワクチンモデルを用いた免疫実験などを更に進めていく予定である。 この系の確立のため、ハーバード医科大学マサチューセッツ総合病院ゴードン医学イメージセンターとの共同研究を進め人事交流も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に基づき、近赤外レーザーの舌下粘膜面への照射装置の作成を行い、至適非侵襲的レーザー照射強度について一定の成果が得られた。照射装置については、マウス開口用の保定具を作成し、光路形成用のコリメータレンズ、アイリスなどの光学部品と組み合わせることで、レーザーのビーム成形ができた。至適非侵襲的照度に関しては、舌下の粘膜表面温度は想定された温度上昇よりもずっと低く、熱容量の大きい部位であることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果に基づき、光による生体反応をできるだけ大きく引き出すためにレーザーの照度を更に上げ、最大安全照度での検証を検討する予定である。アイリスなどによる光の損失を最小限にするなどの光路形成の改善を図る。舌下粘膜の組織学的な検証と併行して、粘膜照射による液性・細胞性免疫応答の評価やワクチン増強効果の機序検討をインフルエンザマウスモデルを用いて進める。角化層をもたない粘膜は近赤外光の組織内到達効率が皮膚よりも良く、ごく短時間に免疫賦活化作用を得られる可能性があり、投与経路をリンパ組織の豊富な舌下粘膜にすることで抗原の到達効率が良い可能性があることに期待している。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の実験計画を遂行中に光源である連続波1064nmのNd:YVO4レーザーが故障したため、年度の終わりから開始する予定であった液性/細胞性免疫応答に対する増強効果の検討の開始ができなかったったため。次年度はレーザーの復旧費用が生じるために物品費が使用計画よりも多くなるが, 予算に合わせて実験の統計学的妥当性が失われない範囲での規模の調整を行う予定である。
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