研究課題/領域番号 |
19K16704
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
林崎 浩史 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50779907)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | NKT細胞 / 未分化 / 骨髄 |
研究実績の概要 |
NKT細胞はT細胞とは異なり、胸腺にてエフェクター細胞へと分化成熟することが知られているが、生体内の免疫応答におけるエフェクター細胞バランスを考えると、末梢における未分化NKT細胞からの分化機構の存在が示唆されていた。しかしながらその分化機構は未だ明らかとなっていない。研究代表者はこれまでにNKT細胞サブセットの一部が、末梢に少数存在するuncomitted NKT細胞(uncNKT細胞)から分化する可能性を見出しており、また、骨髄に局在するNKT細胞がuncNKT細胞と類似の表現系を持つことを明らかにしていた。本研究では、uncNKT細胞の分化能とその分化機構、そして生理的重要性を明らかにすることを目的としている。 令和元年度はuncNKT細胞の特異的分子や機能分子を明らかにする目的で、骨髄NKT細胞のRNAシークエンス解析を実施した。得られた結果を脾臓NKT細胞のRNAシークエンス結果と比較解析したところ、研究代表者がすでに同定していた膜分子発現や転写因子発現と一致する結果であった。また、リアルタイムPCRならびにフローサイトメトリーを用いた追跡(確認)解析により、この度新たに同定した分子群が確かに骨髄NKT細胞にて特異的に発現することを明らかにした。さらに、骨髄NKT細胞で高発現する膜分子を同レベルで発現するNKT細胞が末梢にも少数存在することを見出し、この膜分子がuncNKT細胞特異的マーカーになりうることが示唆された。その他の機能分子としては、抗体産生応答に寄与する分子の発現がみられ、骨髄NKT細胞ならびにuncNKT細胞の生理的重要性に迫れる知見を得ることが出来た。また、負の制御分子の発現も認められたことからこれらの分子が未分化状態を維持するために機能している可能性が推察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初想定していたよりも効率、収量良く骨髄NKT細胞を単離することができ、精度の高いRNAシークエンス解析を実施することができた。また、その解析結果より骨髄NKT細胞特異的な分子を同定することができ、uncNKT細胞の機能解析へと予定通りに進めることが可能である。uncNKT細胞の細胞動態解析は標的細胞が少数であり、特異的マーカーが不明であった事もあり難航していたが、RNAシークエンスで同定できた膜分子をターゲットに引き続き動態解析を進めていく。以上より、全体としては概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、まず新たに同定した特異的膜分子に対する抗体をマウスに投与する事で骨髄NKT細胞ならびにuncNKT細胞のdepletionの検討を行う。特異的depletionが可能であれば、depletionしたマウスを用いて、uncNKT細胞から分化することが示唆される濾胞性NKT細胞(NKTfh細胞)の発生の有無をフローサイトメトリーならびにコンフォーカル顕微鏡にて解析する。また、骨髄NKTならびに末梢のuncNKT細胞の動態解析をフローサイトメトリーで解析し、骨髄がuncNKT細胞のリザーバーとして機能するかを明らかにする。さらに、RNAシークエンス解析により判明した機能分子のNKT特異的欠損マウスを樹立し、NKT細胞を介した免疫応答における骨髄NKT細胞とuncNKT細胞の詳細な機能を解析し、得られた結果をまとめ論文投稿を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付申請時に、国際学会を含む複数の学会に参加する為の旅費を計上したが、国際学会が参加できなかった為、旅費の支出がなかった。また、研究補助員への人件費・謝金を予算に計上したが、本年度は補助員への人件費・謝金を支出する必要がなかった為、次年度使用額が生じた。次年度予定している研究を計画通り遂行する為、消耗品等の購入での支出を計画している。
|