研究課題/領域番号 |
19K16706
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
神田 壮平 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (40810966)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 進行前立腺癌 / CYP19遺伝子多型 / 化学内分泌療法抵抗性 / 前立腺間質エストロゲン受容体 |
研究実績の概要 |
進行前立腺癌において、個別化診療のためのバイオマーカー同定及び化学内分泌療法抵抗性の分子生物学的機序解明は重要な課題である。我々は先行研究でアロマターゼをコードするCYP19の生殖細胞系列遺伝子多型が前立腺癌発症・予後に関連し、その一部がCYP19活性に影響を与える機能的遺伝子多型であることを報告している(Kanda, Int J Cancer, 2015)。またTissue microarrayを用いたpilot研究で前立腺間質エストロゲン受容体(ER)発現が前立腺癌化学内分泌療法抵抗性に関連する可能性も見出した。上記より生殖細胞系列CYP19遺伝子多型に機能的SNPsが存在し、血中または前立腺組織内での性ホルモンバランスを変化させ、前立腺間質ERと下流シグナル制御により前立腺癌化学内分泌抵抗性を生じると仮説を立てた。本年度、Tissue microarrayで得られたpilot研究の結果を再検証するため、4種類のステロイド受容体の前立腺組織での染色再評価を行い、病理組織、再発との関連を検討し、結果を報告した(Matsuda, BMC Cancer, 2020)。また、遺伝子多型解析および血清ステロイド測定を進めるため化学内分泌療法後に手術を行ったハイリスク限局性前立腺癌患者の血液採取を行い、解析のための臨床検体の収集を継続した。同時に、Commercial baseの前立腺間質細胞培養と、これを用いて前立腺癌細胞との共培養、サイトカイン放出や細胞機能の解析を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
pilot研究で得られた結果をもとに、4つのステロイド受容体(AR:アンドロゲン受容体、GR:グルココルチコイド受容体、PR:プロゲステロン受容体、ER)免疫染色スコアの再評価を行った。間質ARおよびPRが化学内分泌療法後の前立腺組織で、内分泌療法後、無治療手術組織に比較し、有意に発現が上昇した。pilot研究で有意と考えられていたERα発現は高い傾向にあったが、有意差はなかった(p =0.074)。また間質PR発現は化学内分泌療法後前立腺全摘を行ったハイリスク前立腺癌症例の生化学的再発に関連する傾向があった(HR = 0.45, 95% CI 0.20-1.02, p = 0.054)。以上の結果を論文で報告した(Matsuda Y, Narita S, Nara T, et al. Impact of nuclear YAP1 expression in residual cancer after neoadjuvant chemohormonal therapy with docetaxel for high-risk localized prostate cancer. BMC Cancer. 2020 Apr 15;20(1):302.) 。また前立腺間質細胞PrSCと、4種の前立腺癌細胞株(LNCaP、PC-3、DU145、22RV-1)の共培養、サイトカイン放出や細胞機能解析を行っており一部の培養上清中のサイトカインが上昇するなど興味深い知見も得られている。初期の仮説とは異なった知見が得られているものの、新規に注目すべきステロイド受容体やサイトカインが抽出できたため、研究は順調に進んでおり、現在細胞実験に取り組んでいるところである。
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今後の研究の推進方策 |
①In vitroでの前立腺間質ERおよびPR導入およびそれに伴うサイトカイン上昇と共培養前立腺癌細胞の機能解析 ②患者ERおよびPR関連SNPs、炎症関連サイトカインと癌治療効果、予後の関連検討 ③患者ERおよびPR関連SNPs、炎症関連サイトカインと腫瘍組織での間質ERおよびPR発現の検討 ④In vitroでの前立腺間質細胞へのERおよびPR変異導入と共培養前立腺癌細胞の機能および培養上清サイトカイン値への影響 ⑤XenograftモデルによるERおよびPR変異導入前立腺間質細胞の腫瘍増殖、血清サイトカインへの影響検討
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に必要な物品の購入が当初予定より少なく済んだこと、旅費に使用しなかったことが、次年度使用額が生じた理由です。
次年度研究計画の遂行に必要な物品(前立腺癌細胞株、PCRプライマー、免疫染色用抗体、など)の購入に使用する予定である。
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