細胞接着分子CADM1は免疫グロブリンスーパーファミリー (IgSF) に属し、同分子種あるいはIgSFに属する異分子種と相互作用し、細胞接着に寄与する。CADM1の発現異常は様々な病態に関与し、成人T細胞白血病 (ATL) に高発現するCADM1は血管内皮細胞との接着を介して臓器浸潤を亢進し、またCadm1遺伝子欠損マウスは精子細胞においてCADM1の欠如によるセルトリ細胞からの脱接着が起こり雄性不妊となる。しかしながら、血管内皮細胞及びセルトリ細胞においてCADM1と相互作用する分子は同定されていない。本研究は、申請者が独自に作成したIgSFタンパク質ライブラリーとCADM1との相互作用を網羅的に検討することによりCADM1の新規相互作用分子を同定すること、さらにCADM1が関与するATL細胞の臓器浸潤及び精子細胞の成熟の分子機構を明らかにすることを目的として行った。 本年度は、マウスモデルを用いてATL細胞のCADM1を介した肝浸潤について検証し、ATL細胞に発現するCADM1が血管内皮細胞に発現するCADM1と相互作用して血管外遊走及び臓器浸潤を促進することを明らかにした。特に、マウスT細胞リンパ腫細胞EL4は、CADM1の過剰発現によりマウス尾静脈注射後の肝浸潤が亢進した一方で、血管内皮細胞特異的Cadm1遺伝子欠損マウスでは肝浸潤の亢進が認められなかった。 また、IgSFタンパク質ライブラリーを用いてCADM1の新規相互作用分子のスクリーニングを行ったが、CADM1の新規結合分子を同定することはできなかった。
|