研究実績の概要 |
本研究は、ケモカインCCL19を発現させた間葉系幹細胞(MSC)の担がんモデルマウスを用いた抗腫瘍効果と免疫チェックポイント阻害療法との併用療法の可能性を検討した。マウス骨髄より単離したMSCにレトロウイルスベクターを用いてCCL19遺伝子を導入した(MSC/CCL19)。マウス大腸がん細胞CT26とMSC/CCL19をBALB/cマウスにco-injectionし、MSC/CCL19の腫瘍残存性をPCRにて経時的に解析した結果、MSC/CC19は少なくとも20日間腫瘍に残存していた。一方で、比較対象として用いたCCL19発現線維芽細胞(Fib/CCL19)の残存性は12日間程度であった。次に、CT26担がんマウスを用いて抗腫瘍効果の検討を行った。腫瘍接種14,16日後にMSC/CCL19の局所投与を行った群で、6匹中3匹のマウスで腫瘍の拒絶を認めた。同じ治療スケジュールでMSCまたはCCL19リコンビナントタンパクを局所投与した群では、抗腫瘍効果を確認できなかったことから、MSC/CCL19局所投与による持続的なCCL19発現が抗腫瘍効果に重要であると考えられる。免疫染色解析において、MSC/CCL19局所投与後のCT26腫瘍内にはCD3,CD4,CD11c陽性細胞が顕著に増加していたことが明らかになった。さらにFACS解析によると、CD45陽性F4/80陰性CD11c陽性CCR7陽性細胞が増加していることが分かった。CD4中和抗体により、これらの細胞数が減少したことから、上述した細胞はCD4も発現していると考えれる。MSC/CCL19局所投与と免疫チェックポイント阻害療法との相乗効果を検討した結果、抗PD-L1抗体との組み合わせにより、6匹中5匹のマウスで腫瘍を根絶した。
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