本研究は、がん細胞とその周囲にある線維芽細胞とのクロストークを主としたがん微小環境の解析を行う。この解析は独自に発見したS100A11-RAGEを基軸として進め、がん感化型線維芽細胞から分泌されるがん悪性化因子を同定し、膵臓がん周囲の微小環境下で起きる現象を解き明かすことを目的とする。2019年度までに、膵臓がん細胞が分泌するS100A11が線維芽細胞の持つRAGE受容体を介してMyD88-mTOR-p70S6K活性化による細胞増殖を促進すること、またS100A11による刺激を受けた線維芽細胞が分泌するPGE2が膵臓がん細胞の遊走能や浸潤能を亢進させることを見出し、報告している。 2021年度ではTPL2の下流にあるZEB1の活性に繋がる候補としてイオンチャネルを見出し、S100から下流経路の解析を行なっている。現在は野生型と変異型の安定発現株を作成し、細胞機能の変化と結合タンパク質の解析を行なっている。
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