in silico解析で同定した胃癌新規癌遺伝子の生物学的意義と臨床的意義

2020 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K16718
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 胡 慶江 九州大学, 大学病院, 助教 (80792902)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2021-03-31
• キーワード: OSBPL3 / 増殖能 / 細胞周期 / 胃癌 / RRAS / RNA-seq / in silico解析 / LOXL1

研究実績の概要

胃癌のデータベースを用いたin silico解析で新規癌遺伝子OSBPL3を同定した。本研究はOSBPL3の胃癌における生物学的意義と臨床学的意義を明らかにし、その根底にあるメカニズムを探索することを目的とした。
初年度では、OSBPL3発現の高い胃癌細胞株を二つ選択し、後続の実験を行なった。OSBPL3ノックダウン胃癌細胞株においては、増殖能が抑制され、細胞周期の進行も阻害されたことを確認した。また、Xenograft mouseを作製し、生理的な状況下でOSBPL3ノックダウンによる胃癌細胞増殖能の低下を確認した。
また当院の胃癌組織にてOSBPL3の免疫染色を行った。OSBPL3は腫瘍周囲の間質細胞や非癌組織細胞よりも癌細胞に高発現していることを確認した。また、二つの胃癌データセット（公共データベース）を用いて、OSBPL3 mRNA高発現が予後不良規定因子であることを確認した。臨床病理学因子の検討においてはOSBPL3 mRNA高発現が高分化、深達度（T3以上）、リンパ節転移、Stage III以上と有意に関連していた。OSBPL3が胃癌細胞の増殖能と細胞周期進行、予後不良に関与するメカニズムを調べるため、OSBPL3ノックダウン胃癌細胞株からRNAを抽出し、RNA-seqに提出した。OSBPL3ノックダウンで変化した遺伝子リストをピックアップし、pathway解析を行った。OSBPL3はRas/Akt pathwayと有意に関連した。続いて、pull down assayにてOSBPL3ノックダウンは活性型RRASの減少、Aktリン酸化の低下をきたした。
したがって、OSBPL3はRRAS/Aktを介して細胞増殖を促進し、胃癌進行につながると考えられた。概ね予定通り実験終了しており、現在論文投稿中です。
他にLOXL1、CYT scoreに関する研究を行いました。

研究成果

• [雑誌論文] Cytolytic activity score as a biomarker for antitumor immunity and clinical outcome in patients with gastric cancer (2021)
  • 著者名/発表者名: Qingjiang Hu 1 , Kentaro Nonaka 1 , Hiroaki Wakiyama 2 , Yu Miyashita 1 , Yoshiaki Fujimoto 1 , Tomoko Jogo 1 , Kentaro Hokonohara 1 , Ryota Nakanishi 1 , Yuichi Hisamatsu 1 , Koji Ando 1 , Yasue Kimura 1 , Takaaki Masuda 2 , Eiji Oki 1 , Koshi Mimori 2 , Yoshinao Oda 3 , Masaki Mori 1
  • 雑誌名: Cancer Med. 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1002/cam4.3828. Online ahead of print.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Potential association of LOXL1 with peritoneal dissemination in gastric cancer possibly via promotion of EMT (2020)
  • 著者名/発表者名: Qingjiang Hu 1 2 , Takaaki Masuda 1 , Shotaro Kuramitsu 1 , Taro Tobo 3 , Kuniaki Sato 1 , Shinya Kidogami 1 , Sho Nambara 1 , Masami Ueda 1 , Yusuke Tsuruda 1 , Yosuke Kuroda 1 , Shuhei Ito 1 , Eiji Oki 2 , Masaki Mori 2 , Koshi Mimori 1
  • 雑誌名: PLoS One 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0241140. eCollection 2020.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Reintroduction of nivolumab in a patient with gastric cancer after improvement of nivolumab-induced acute interstitial nephritis: a case report (2020)
  • 著者名/発表者名: Qingjiang Hu 1 , Hirofumi Hasuda 1 , Kenji Ueki 2 , Akihiro Tsuchimoto 2 , Yoko Zaitsu 1 , Yasuo Tsuda 1 , Yuichi Hisamatsu 1 , Yuichiro Nakashima 1 , Koji Ando 1 , Yasue Kimura 1 , Eiji Oki 1 , Masaki Mori 1
  • 雑誌名: Int Cancer Conf J. 巻: 9 ページ: 127-132
  • DOI: 10.1007/s13691-020-00418-2. eCollection 2020 Jul.
  • 査読あり
• [学会発表] 当科での使用経験から見た胃癌に対するニボルマブの臨床意義 (2021)
  • 著者名/発表者名: 蓮田 博文、胡 慶江
  • 学会等名: 第76回消化器外科学会