研究実績の概要 |
DNAやRNAを構成するピリミジンは生命の維持に必要不可欠な物質であり、生体内では生合成経路とサルベージ経路によって供給されている。ピリミジンの生合成はミトコンドリア内膜に存在するジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)が担っている。またDHODHはピリミジンを多量に必要とするがん細胞の薬剤開発の標的酵素となっているが、前駆体および酸素供給が不十分ながん微小環境におけるピリミジン生合成のメカニズムは不明な点が多い。本研究では阻害剤や分子生物学的手法を組み合わせ、がん細胞特異的なピリミジン生合成経路のメカニズムを明らかにする事を目的とする。さらにヒトDHODH阻害剤の誘導体を用いた構造活性相関及び結晶構造解析も同時に行い、がん微小環境で増殖するがん特異的な阻害剤の設計も行う。 1.Ferulenol(FL)誘導体とヒトDHODHの複合体結晶構造。ヒトDHODHとFL誘導体との共結晶を作製し、5種類の誘導体で分解能1.4-2.7オングストロームの複合体構造を決定した。また11種のFL誘導体との共結晶も解析を進めている。 2.ヒトDHODHに対するFL誘導体の活性測定。精製したヒトDHODHに対するFL誘導体のIC50を測定し、FLと同程度の活性を示す誘導体を複数同定した。 3.FL誘導体のがん細胞に対するIC50測定。FL誘導体のヒト大腸癌由来細胞(DLD-1)に対するIC50の測定を行った。通常培養条件下(37℃, 21% O2 , FBS(+), Glucose (+), Glutamine (+))あるいは低酸素低栄養条件下(37℃, 1% O2 , FBS(-), Glucose (-), Glutamine (-))におけるFL誘導体のIC50を測定することにより、低酸素低栄養条件特異的な阻害効果が確認できた。
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