研究課題
DNAやRNAを構成するピリミジンは生命の維持に必要不可欠な物質であり、生体内では生合成経路とサルベージ経路によって供給されている。ピリミジンの生合成はミトコンドリア内膜に存在するジヒドロオロト酸脱水素酵素(DHODH)が担っている。またDHODHはピリミジンを多量に必要とするがん細胞の薬剤開発の標的酵素となっているが、前駆体および酸素供給が不十分ながん微小環境におけるピリミジン生合成のメカニズムは不明な点が多い。本研究では阻害剤や分子生物学的手法を組み合わせ、がん細胞特異的なピリミジン生合成経路のメカニズムを明らかにする事を目的とする。さらにヒトDHODH阻害剤の誘導体を用いた構造活性相関及び結晶構造解析も同時に行い、がん微小環境で増殖するがん特異的な阻害剤の設計も行う。ヒトDHODHとFerulenol(FL)誘導体を用いた構造活性相関により5つのFL誘導体がFLと同程度のIC50(152-531 nM)を示した。さらに誘導体の結晶構造解析を行い、16種類のFL誘導体とヒトDHODHの複合体結晶構造を得た。これらはヒトDHODHの阻害剤の効率的な設計に非常に有益な情報となる。併せてこれらFL誘導体の低酸素低栄養条件下におけるヒト大腸癌由来細胞(DLD-1)の増殖阻害活性を評価したが、FLよりも高活性の誘導体は見つからなかった。そこでAscofuranone(AF)を用いて免疫不全マウスにDLD-1を移植したXenograftモデルによるヒトDHODH阻害の抗がん活性を評価した。その結果、AF (300 mg/kg)がコントロールとして用いた大腸がんの標準治療薬であるイリノテカン(40 mg/kg)と同等の抗腫瘍効果を示した。この事はヒトDHODHががん微小環境で増殖するがん細胞の創薬標的として有望である事を示している。
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Genes
巻: 11 ページ: 1468~1468
10.3390/genes11121468