研究課題/領域番号 |
19K16720
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
内原 智幸 熊本大学, 病院, 診療助手 (60835172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腫瘍微小環境 / 胃癌 / CAFs / 細胞外小胞 / 抗ガン剤抵抗性 |
研究実績の概要 |
腫瘍微小環境においてCancer associated fibroblasts (CAFs)は、様々な液性因子を分泌し癌進展に関わっている。一方、胃癌はスクリーニングおよび治療法の進歩に伴い予後改善が認められるようになったが、進行胃癌患者に対しては依然として満足できる遠隔成績は得られていない。本研究ではストローマ由来の細胞外小胞 (Extracellular vesicles: EVs)に注目し、新しい分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。 胃癌切除検体を用いて、CAFsのマーカーであるαSMAの免疫染色・定量化を行い、予後との関連性を評価したところ、腫瘍間質にCAFsが多い症例は有意に予後不良であった。またサブグループ解析において化学療法を行ったStageIV症例においても、CAFsが多い症例は特に予後不良であった。このことからCAFsの分泌因子が胃癌の抗がん剤抵抗性獲得に関わるという仮説を立てた。 細胞外マトリックスの存在下でCAFs由来EVs (CAF-EVs)で培養した胃癌細胞はNetwork様の形態変化を起こし、顕著な抗がん剤抵抗性を獲得することを見出した。また、EVsの質量分析の結果、CAF-EVsにおいて最も特異的に高発現していたAnnexinA6に注目した。AnnexinA6の発現を抑制したCAF-EVsではNetwork様の形態変化、薬剤抵抗性がともに抑制されることを見出した。さらにAnnexinA6は胃癌細胞内に取り込まれた後、胃癌細胞膜上のIntegrinβ1を安定化させ、FAK-YAP pathwayを介して抗がん剤抵抗性獲得に寄与することを明らかにした。また、CAF-EVsが促進するFAK-YAPシグナルが抗がん剤抵抗性獲得に関わることを示した。得られる研究成果は腫瘍間質をターゲットとした分子標的の創出につながり臨床的意義は大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗癌剤抵抗性に関わるCAF-EVs中の因子の検討:申請書提出時点では、細胞外マトリックス存在下でCAF-EVs で培養した胃癌細胞が特徴的なネットワーク構造を呈し、シスプラチンに対して顕著な抵抗性を獲得すること、この形態変化はCAF-EVs培養開始後1-3時間以内に起こることからEVs中のタンパク質に注目して質量分析を行っているところであった。現在、CAF-EVs中のAnnexinA6が胃癌細胞の抗がん剤抵抗性獲得に関わることを確認できている。 胃癌細胞内シグナルの検討:CAFの培養上清によって形態変化を起こした胃癌細胞におけるRNA sequencingを行った結果、胃癌細胞のIntegrin signalに注目した。その結果、胃癌細胞上のIntegrinβ1-FAK-YAPシグナルを介して抗がん剤抵抗性獲得に寄与することを明らかにした。Integrinβ1に関してはCAF-EVs由来AnnexinA6によって胃癌細胞膜上に安定化することを示した。 候補分子の臨床的意義についての検討:胃癌切除検体335例を用いて、CAFsのマーカーであるαSMAの免疫染色・定量化を行い、予後との関連性を評価した。 In vivoモデルによる検討:In vitroで得られた結果について胃癌細胞株による腹膜播種モデルマウスを用いた検証を行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
現在はin vivo実験を行うとともに、論文作成中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の節約等で若干端数が出たが、来年度交付分に合算し使用できる見込み。
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