研究課題
腫瘍微小環境においてCancer associated fibroblasts (CAFs)は、様々な液性因子を分泌し癌進展に関わっている。一方、胃癌はスクリーニングおよび治療法の進歩に伴い予後改善が認められるようになったが、進行胃癌患者に対しては依然として満足できる遠隔成績は得られていない。本研究ではストローマ由来の細胞外小胞 (Extracellular vesicles: EVs)に注目し、新しい分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。胃癌切除検体を用いて、CAFsのマーカーであるαSMAの免疫染色・定量化を行い、予後との関連性を評価したところ、腫瘍間質にCAFsが多い症例は有意に予後不良であった。またサブグループ解析において化学療法を行ったStageIV症例においても、CAFsが多い症例は特に予後不良であった。このことからCAFsの分泌因子が胃癌の抗がん剤抵抗性獲得に関わるという仮説を立てた。細胞外マトリックスの存在下でCAFs由来EVs (CAF-EVs)で培養した胃癌細胞はNetwork様の形態変化を起こし、顕著な抗がん剤抵抗性を獲得することを見出した。また、EVsの質量分析の結果、CAF-EVsにおいて最も特異的に高発現していたAnnexinA6に注目した。AnnexinA6の発現を抑制したCAF-EVsではNetwork様の形態変化、薬剤抵抗性がともに抑制されることを見出した。さらにAnnexinA6は胃癌細胞内に取り込まれた後、胃癌細胞膜上のIntegrinβ1を安定化させ、FAK-YAP pathwayを介して抗がん剤抵抗性獲得に寄与することを明らかにした。また、CAF-EVsが促進するFAK-YAPシグナルが抗がん剤抵抗性獲得に関わることを示した。得られる研究成果は腫瘍間質をターゲットとした分子標的の創出につながり臨床的意義は大きいと考えられる。
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Cancer Research
巻: 80 ページ: 3222~3235
10.1158/0008-5472.CAN-19-3803