研究実績の概要 |
肝細胞癌は根治的な肝切除術後においても高頻度に再発を繰り返す予後不良な疾患である。肝細胞癌の再発形式に関しては①原発巣とは異なる発生によるde novo発癌を来した多中心性発癌、②原発巣が血行性に転移を来した肝内転移再発の2つがあり、多中心性再発に対する治療としては、 C型肝炎ウイルスに対するIFNを用いた抗ウイルス療法(Lancet, 1998, Gastroenterology 2011)レチノイン酸を用いた再発予防効果(ILCA. 2010)などが報告されている。一方、肝内転移再発に関しては未だ有効な治療法が開発されておらず、新規治療法の開発が急務である。また早期再発に関しては肝内転移再発が主に寄与していることが報告されており、本研究では肝細胞癌における肝内転移の機序を解明し、早期再発に対する効果的な予防/治療薬を創出する事を研究目的とした。 我々はこれまでに肝細胞癌症例のマイクロアレイデータベース(GSE10141)を用いた解析を行い、LOX (Lysyl Oxidase)遺伝子を抽出し、さらにLOX高発現と最も強い相関を持つEMT(Epithlial mesenchymal transition)を同定し、臨床検体及びin vitroによる解析を行ってきた。臨床検体から抽出した蛋白を用いた検討では、LOX高発現症例はEMT関連遺伝子発現と有意に相関しており、早期再発、予後不良に関連していることが明らかになった。さらにin vitroによる機能解析においてLOXの上流遺伝子であるHIF-1α(Hypoxia-Inducible Factor -1α)に着目し、LOX及びHIF-1αをknock downさせたところ、有意に遊走能、浸潤能を抑制し、EMT関連遺伝子との相関は、RNAレベルでは間葉系マーカーであるTWIST、Vimentin、Slugを有意に抑制していることが明らかとなった。
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