本研究では、NMD阻害とスプライシング阻害の相乗効果によりがん特異的にスプライシング異常を引き起こして有害なタンパク質を合成させることでがん細胞に障害を与える機構を明らかにすることを目的としている。2019年度においてはNMD抑制下でのスプライシング阻害剤処理で様々ながん細胞に与える細胞障害性がどの程度変化するかを明らかにすることを目的として研究を進めた。HeLa細胞やHCT116細胞、293細胞などの細胞株に対しスプライシング阻害剤Pladienolide B及びIsoginkgetinを単独で添加した結果、スプライシング阻害に至適な濃度では強い細胞毒性を示し、また、低濃度のスプライシング阻害剤添加時にNMDをshRNAで阻害したが有意な差は認められなかった。そのため、2020年度においてはshRNAを用いた各スプライシング因子の阻害を行ったうえでNMDを阻害することによ り、NMD抑制下でのスプライシング阻害ががん細胞に与える細胞障害性を評価することにしたが、ノックダウン効率が低く、また、MTT試験法では培養期間も限られるため明確な結果は得られなかった。 そこで、ノックダウン効率改善のため自作のshRNAのみではなくsiRNAを使用して検討を行い 、さらに長期間における細胞毒性の評価を行うためコロニー形成による評価試験法を取り入れて評価を行った。2021年度においては引き続きコロニー形成による細胞障害性の評価を行った。コロニー形成試験からはHeLa細胞やA549細胞等の細胞株でSMG6とSRSF1の組み合わせでは強く、SMG6とSRSF3の組み合わせによりわずかに細胞障害性を示すことが明らかとなった。また、SMG6のノックダウンを行うタイミングをずらすことにより細胞障害性が軽減されることも明らかとなった。しかしながら、研究代表者の体調が思わしくなく本研究を中断することとなった。
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