研究課題/領域番号 |
19K16726
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
武石 幸容 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (00758055)
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研究期間 (年度) |
2020-03-01 – 2024-03-31
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キーワード | 上皮間葉転換 / クロマチン動態 / 口腔上皮がん / ChIP-Seq |
研究実績の概要 |
上皮系細胞が間葉系細胞の性質を獲得する上皮間葉転換(EMT)はサイトカイン TGF-βによって誘導される。EMTはその性質を変化させることから細胞内で様々なイベントを起こしていると予想される。 前年度は正常細胞とがん細胞をEMT誘導し、前後のヒストン修飾を比較する計画だったが手技等の問題により完了しなかった。本年度は遅れていた口腔上皮がん細胞 HSC-3のヒストン修飾(H3 K4/K9/K27)の検出し、既に解析した正常細胞 HaCaTや同じく口腔上皮がん細胞 SASとの比較からHaCaTとSAS/HSC-3間でヒストン修飾の程度が異なることがわかった。この結果からヒストン修飾によって制御されているクロマチン構造も正常細胞/がん細胞間で違いがあると考えられる。HaCaTとSAS/HSC-3間のEMT誘導前後のマーカータンパク質の発現量に違いは、このクロマチン構造変化の違いに起因して転写活性が大きく変化している可能性が高い。エンハンサーによる遺伝子の発現制御に注目し、ChIP-Seqによる網羅解析で正常細胞/がん細胞間における転写領域等の比較を目指した。そのためChIP-Seqを行う前段階であるChIP法の条件検討を行った。最終的にホルムアルデヒドで固定し、マイクロコッカスヌクレアーゼを用いてクロマチンを剪断させる方法を採用した。しかし免疫沈降(IP)による収率が低いためNGS(次世代シークエンサー)解析ができなかった。これは固定のクロスリンク反応が過剰であること、もしくはIPに用いる抗体の効率が悪いことなどの複数の要因が考えられる。現在、クロスリンクの条件やIPに用いる抗体などを検討し、IPの収率の向上を目指している。そのため当初の計画からやや遅れている。早急にChIP-Seqを行い、正常細胞/がん細胞間の比較解析でこれら細胞間のEMT誘導の違いを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度中にChIP-SeqにおけるNGS解析を外部委託する予定であった。しかしIPの収率が低いためNGS解析を依頼することができなかった。そのためやや研究が遅れている。 良いChIP-Seqの結果を得るためには、IPの収率を向上させる必要がある。HaCaTで免疫沈降を行い検討したが、十分な収率を得られていない。引き続き実験手技の再検討や免疫沈降に用いる抗体を検討している。早急にこの課題を解決し、研究を進める。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の早い時期にChIP-SeqにおけるNGS解析を委託する予定である。得られたシークエンスデータは自分で解析し、まとめる。また得られた知見の確認を行う。次年度は最終年度であるため、本研究のまとめを意識して取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の遅れによりChIP-SeqにおけるNGS解析の委託ができていない。そのため計画していたNGS解析の委託料が未使用で次年度使用額が生じた。次年度、計画通りにChIP-SeqのNGS解析の委託料として使用する。
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