研究課題/領域番号 |
19K16727
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
趙 民知 公益財団法人がん研究会, がん研究所 実験病理部, 研究員 (80808866)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Aneuploidy / Chromosomal instability / Non-coding RNA / CPC / Aurora B kinase |
研究実績の概要 |
染色体センジャー複合体(CPC; Chromosomal Passenger Complex)はセントロメアに局在し、細胞の正確な染色体の分配を保証する。私たちの先行研究では、HP1(Heterochromatin Protein 1)がCPCに結合し、その活性強化に必要であることと、がん細胞ではCPCに対するHP1の結合量が減少していることを報告した。本研究では、HP1とセントロメア由来の非コードRNA(ncRNA; non-coding RNA)によるCPC機能制御の可能性を検討することで、がん細胞の染色体不安定性獲得機構を明らかにすることを目的とした。2020年度までに、CPC機能の低下と染色体異数体化とのあいだで形成される「負のサイクル」による染色体不安定性の獲得が、がん細胞の悪性化に寄与することを見出した。さらに、CPCのセントロメアの局在や機能をncRNAが関連する可能性を示唆した。これらの知見を踏まえて、2021年度は以下の知見を得た。 1.マウスの神経がん幹細胞をシングルセルから単クローン化し、そのプロイディとCPCの機能や動能を観察した。その結果、「プロイディが異なる細胞は、それぞれCPC機能の程度とがん幹細胞性が異なる」ことを見出し、染色体異数体化ががん幹細胞性に関連することが示唆された。 2.転写障害によりAurora Bの活性強化に必要であるHP1がセントロメアに集合しないことを観察し、セントロメア由来のncRNAがHP1を介しCPCをセントロメアに集める働きをしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度に計画していた実験を予定通り実施し、「プロイディが異なるがん幹細胞は、そのCPC機能の程度と、がん幹細胞性も異なる」ことと、「セントロメア由来のncRNAが、セントロメアへのHP1とCPCの集合動態を制御する」可能性を見出した。本研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究成果から、セントロメア由来のncRNAがHP1を介し、セントロメアにおけるCPCの機能を制御する可能性が見えてきた。これらの結果を踏まえて、1)HP1がどのようにRNAと相互作用するのか、2)がん幹細胞で、CPCに対するHP1の結合量やHP1のセントロメア集合度合を検討し、がんの進行・悪性化過程における染色体不安定性獲得機構を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の影響で試薬の欠品や納期の遅れなどがあり、未使用額が生じた。2022年度は、計画している研究に変えて、クローンのトランスクリプトーム解析を計画しているため、次年度使用額を使用する予定である。
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