研究課題/領域番号 |
19K16728
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小林 大貴 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 研究員 (30528683)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん代謝 / 解糖系 / 細胞遊走 |
研究実績の概要 |
複雑ながん代謝を理解することは新たながん治療法開発につながる。解糖系律速酵素ホスホフルクトキナーゼ(PFK1)の活性抑制による解糖系代謝フローの切替はペントースリン酸経路の亢進、それによる酸化ストレス耐性の向上によりがんの悪性化に寄与することが知られるが、我々はこれに加えて、がん転移に関与する運動性をも亢進させることを独自に見出した。そこで本研究では「複雑・多様ながん代謝がどのようにがんの悪性化に寄与するか」の理解を目指すため、解糖系代謝フロー切替によるがん細胞の悪性形質獲得機序の解明を目的とした。 まず解糖系代謝フロー切替がどのような遺伝子発現変化をもたらすか調べるためPFK1ノックアウト細胞とPFK1再導入細胞のトランスクリプトーム比較解析を行った。その結果PFK1ノックアウト細胞はPFK1再導入細胞に比べて細胞細胞間接着接着因子をコードする遺伝子の発現が低下している一方、細胞外タンパク質の遺伝子発現が上昇していた。また細胞骨格の遺伝子発現にも変化がみられ、これらの遺伝子発現の差は PFK1 ノックアウト細胞の細胞遊走能が高いことと矛盾しなかった。さらに当該解析により、PFK1 ノックアウト細胞でより発現が増加していて、細胞遊走との関連が示唆されている遺伝子発現調節因子を見出した。本遺伝子をノックダウンするとPFK1ノックアウト細胞の細胞遊走が抑制されることから、解糖系代謝フロー切替によりがん細胞の運動性を亢進させる責任遺伝子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一年目の目標としていた解糖系代謝フロー切替によるがん細胞の運動性獲得の責任遺伝子同定ができた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度に特定したがん細胞運動性亢進の責任遺伝子の発現制御や機能を細胞生物学的手法、およびケミカルバイオロジーの手法により解析する。また代謝フロー切替による細胞遊走亢進に一般性があるか、他の培養細胞を用いて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画がおおむね順調に進み、当初の想定より物品の購入費が少なくなった。当該助成金は次年度必要な消耗品の購入、旅費、受託解析、研究成果の発表に使用する予定である。
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