研究課題/領域番号 |
19K16729
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛 |
研究代表者 |
宮居 弘輔 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 臨床検査医学, 助教 (30835616)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精巣胚細胞腫瘍 / セミノーマ / FISH / 遺伝子発現解析 / マイクロアレイ法 |
研究実績の概要 |
本研究は非セミノーマへの腫瘍進展に密接に関わる早期の分子異常の解明を目的としており、本年度は単一型セミノーマと混合性腫瘍内のセミノーマに対し、以下の研究・報告を行った。 1. 精巣胚細胞腫瘍で数的異常の報告がある1, 7, 8, 12, 17, Xの6染色体について、セントロメア近傍領域を標的とした蛍光標識DNA probeを用いたfluorescence in situ hybridizationを施行し、腫瘍細胞100個の染色体数とその頻度を計測した。染色体不安定性 (染色体数のばらつき) を最頻値 (mod) から外れた細胞の割合で評価した。混合性腫瘍内のセミノーマは単一型セミノーマに比して染色体不安定性が有意に大きく、両者の分子異常のステータスの違いが確認された(雑誌論文1)。 2. 上記の2タイプのセミノーマそれぞれ6例ずつ計12例について、Agilent Expression Arrayによる網羅的遺伝子発現解析を施行した。複数の遺伝子に発現量の有意差が検出され、階層型クラスター解析で上記の腫瘍タイプに即した2グループに分別された。今後はその遺伝子群のうち、特に発現量差が顕著であった亜鉛代謝関連、 Mitogen-activated Protein Kinase経路関連分子に注目し、RT-PCR法によるmRNA発現量の確認を行う予定である。 また、当初予定には含まれていないが非セミノーマの腫瘍進展という目的が一致する副次的な研究として、精巣原発絨毛癌におけるepidermal growth factor receptorの蛋白異常発現と遺伝子増幅が検討した12例のほぼ全例でみられるも、チロシンキナーゼ領域のエクソン全長(エクソン18-24)の遺伝子変異はいずれの症例にも検出されてなかったことを報告した(雑誌論文2)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定で本年度に計画していたfluorescence in situ hybridizationによる単一型セミノーマと混合性腫瘍内のセミノーマの染色体不安定性の比較検討は終了し、雑誌報告を行った。それに伴い、予定では2020年以降に実施予定であった両者の網羅的遺伝子発現解析を2019年度内に前倒しで開始することができ、現在その結果を解析中である。以上から、本研究課題は当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現状では、単一型セミノーマと混合性腫瘍内のセミノーマに対してマイクロアレイ法による網羅的遺伝子解析を施行し、両者の間で有意な発現量差のある幾つかの遺伝子群を見出すことができている。今後はスクリーニング検査である本解析法の結果を、RT-PCRによるmRNAの定量評価によって確認し、本研究の目的である非セミノーマへの腫瘍進展に密接に関わる早期の分子異常の検出(選び出し)を遂行するべく研究を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子発現解析として委託したAgilent expression arrayの解析結果の納期が、新型コロナウィルス感染症の蔓延を主体した影響により当初予定よりも1か月程度遅延し、年度内に計上できなかった。上記に示した通りこの分は翌年度分として使用済であり、残額は今後の研究に必要な予算として計画通りに使用する予定である。
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