研究課題/領域番号 |
19K16730
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
安西 高廣 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 特任研究員 (80786137)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膜タンパク質 / トランスポーター / ノックアウトマウス / 大腸がん |
研究実績の概要 |
本研究は、申請者らが真に大腸がん細胞で特異的に高発現する腫瘍マーカー候補分子の1つとして見出した、TMEM180のがんにおける分子機能解明を目的としている。 令和元年度は、生化学的な解析の一環として、特にTMEM180のトポロジーの解析に大きな進展が見られた。TMEM180のホモロジーモデルを基に、ループと予想される部位にFLAGタグを挿入した改変TMEM180発現ベクターを複数作製し、それぞれHEK293T細胞での一過性発現を行い、膜透過処理の有無を組み合わせた細胞免疫染色を行うことにより、ループ部分の膜の内外の配向を決定、12回膜貫通型タンパク質であることを証明した。また、N、C末端側ともに細胞外に露出していることを明らかにすると同時に、カチオンシンポーターとして機能する可能性を見出した。本成果はTransporter Classification Databaseの新規項目として記載された(http://www.tcdb.org/search/result.php?tc=2.A.2.3.14)。 一方、生理学的な解析については、アフリカツメガエル卵母細胞への発現と電気生理学的解析の予備検討を行ったが、細胞膜上への発現が確認できなかった。細胞での一過性発現における局在解析の結果、主に細胞内に集積していることを見出しており、何らかの刺激、もしくはパートナータンパク質がないと細胞膜上へ移行しない可能性が考えられた。 ノックアウトマウスの解析としてF2世代を樹立し、胎生致死、新生児致死ではないことが明らかとなり、Tmem180は発生において必須ではないことがわかった。10週齢においては野生型マウスと明確な差異は認められず、妊孕性にも問題がないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで全く報告がなかったTMEM180分子に対し、ホモロジーモデルと細胞免疫染色により12回膜貫通型タンパク質であるということを実験的に証明し、査読論文として報告(Anzai and Matsumura, BBRC, 2019)できた。またノックアウトマウスのF2世代が誕生し、形態学的な解析が可能となり、順調に解析が進んでいる。しかし、生理学的解析については、TMEM180の細胞膜上への局在が、電気生理学的解析を行う上で越えなければならない壁であることが判明した。以上のことから、本年度はおおむね順調に研究が進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ノックアウトマウスの解析としては、新学術領域研究 先端モデル動物支援プラットフォーム事業に採択され、病理学的解析を進めており、得られた知見を基に機能の類推を行う予定である。 生理学的解析については、TMEM180の局在メカニズム解明が電気生理学測定のための重要なポイントであることが判明したため、移行シグナルや局在化シグナル配列の有無の検討、パートナータンパク質が存在するかなど、複合的な解析を進め、細胞膜で発現する条件を探索する。 TMEM180ノックダウン細胞のRNA-seqについても解析を進めており、TMEM180が関与する生物学的プロセスを探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な物品を効率よく計画的に購入したため次年度使用額が生じた。次年度の研究遂行に必要な物品購入に充当する。
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