研究課題
PanNETは膵臓の神経内分泌組織であるランゲルハンス島に由来し、膵臓では膵管がんに続いて2番目に多いが、10万人あたり2人以下の発生率という稀な疾患でもある。また、近年PanNETの罹患率が世界中で上昇しており、対応は急務である。しかし、希少がんであるPanNETの症例の収集が困難である事と、研究に役立つヒトと類似する早期に高悪性度PanNETを発症する動物モデルが存在しない事により詳細な発生機序は未だに不明である。我々は、p53標的遺伝子PHLDA3がAktの活性化を抑制する事、肺、膵臓及び直腸の神経内分泌腫瘍においてがん抑制遺伝子として機能する事を明らかにした。ヒトPanNET症例において、PHLDA3はヘテロ接合性の喪失に加えてメチル化というtwo-hitによって不活化され、PanNETの新規がん抑制遺伝子である事、さらにはPHLDA3の機能喪失はPanNET患者の腫瘍悪性度・予後と相関する事が示され、PHLDA3の診断はPanNETの予後予測マーカーになると考えられる。一方、PanNETにおいて、がん抑制遺伝子MEN1のLOH及び点突然変異が高頻度に認められることが知られているが、我々は、半数以上のPanNET症例においてPHLDA3とMEN1両遺伝子のLOHが同時に観察されることを示した。このことから、PHLDA3・MEN1両遺伝子の同時機能喪失がPanNET発症に必須であると考えられる。そこで、本研究では、ヒトPanNETのゲノム異常を模倣するPHLDA3とMEN1を同時に欠損した二重欠損モデルマウスを作製した。さらに、二重欠損マウスにおいて早期に高悪性度のPanNETの発症が観察された。今後、二重欠損マウスを用い、PHLDA3及びMEN1両遺伝子のPanNET発症及び悪性化との関連性を調べ、PanNET発症に関わる詳細な分子機序を解明する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
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