研究課題/領域番号 |
19K16734
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
菊地 逸平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (80772376)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん / シグナル伝達 / リン酸化 / チロシンキナーゼ / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
申請者らは近年、核内タンパク質Parafibrominがチロシンリン酸化状態依存的にWnt経路、Hedgehog経路、Notch経路、Hippo経路という発がんに密接に関わる4つのシグナル経路を統合的に制御することを明らかにした。しかし、Parafibrominのチロシンリン酸化が生物個体レベルの生命現象に果たす役割は未だ不明である。そこで本研究では、Parafibrominのチロシンリン酸化を担うPTK6ファミリーチロシンキナーゼ群を多重欠損させた遺伝子改変マウスを作製ならびに解析することで、Parafibrominチロシンリン酸化が担う生理的役割ならびにがんに代表されるヒトの病態形成への役割解明を目指している。 令和元年度には、以下の成果を得た。 1. CRISPR/Casシステムを用いたゲノム編集技術により、PTK6ファミリーキナーゼ(Ptk6, Srms. Frk)を三重欠損した遺伝子改変マウスの作製に成功した。 2. ジェノタイピング解析により、多重欠損の遺伝子型を持つマウスは胎生致死・新生児致死を示さず、成体まで成長可能であることがわかった、 3. 作製したマウスの全身臓器の組織学的解析を行なった結果、小腸において腸管上皮細胞の分化異常ならびに細胞増殖の減退が観察された。このことから、PTK6ファミリーチロシンキナーゼは腸管上皮の組織恒常性維持に重要な役割をもつことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りゲノム編集技術を用いた方法によりPTK6ファミリーキナーゼ多重欠損マウスの作製に無事成功し、さらにマウス腸管上皮組織における表現型を明らかにしつつあるため。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の今後の推進方策として、PTK6ファミリーキナーゼの多重欠損が腸管上皮細胞の文化異常を生じる分子メカニズムの詳細を遺伝子発現の網羅的解析(RNA-seq)等により明らかにする。さらに、がんの発生・進展における役割を明らかにするためにDSS (dextran sulfate sodium) 投与による腸炎誘導性発がん実験ならびに電離放射線照射を用いた消化管障害の誘導実験なども並行して行う。
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