研究課題/領域番号 |
19K16738
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新井 祥子 金沢大学, がん進展制御研究所, 特任助手 (80824870)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ALK肺癌 / 髄膜癌腫症 / 中枢神経系転移 |
研究実績の概要 |
第2世代のALKチロシンキナーゼ阻害薬であるアレクチニブは、ALK融合遺伝子陽性肺癌(以下ALK肺癌)に対し、第1世代ALK-TKIであるクリゾチニブよりも奏効率が高く中枢神経系病変に対する有効性も高いが、長期の治療により耐性となり再発する症例が問題になりつつある。本研究では、最も臨床的に治療に難渋するALK肺癌の髄膜癌腫症に焦点を絞り、髄膜癌腫症おけるアレクチニブ耐性機構を解明し、耐性を克服する治療法を見出すことを目的として研究を進めた。 まず、ヒトALK肺癌細胞株をマウスの髄腔に移植したモデルにおいてアレクチニブ耐性を誘導し、得られた耐性株を用いて耐性機構の解明を目指した。その結果、樹立したアレクチニブ耐性株ではEGFRのリガンドであるアンフィレギュリンの発現が上昇してEGFRが活性化してアレクチニブに耐性化していることが明らかになった。また、アレクチニブとEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)を併用することにより、アレクチニブ耐性株においてアレクチニブへの感受性が回復することがin vitroおよびin vivoで明らかになった。さらに、アレクチニブ耐性となったALK肺癌の髄膜癌腫症患者の髄液では、EGFR-TKI耐性となったEGFR変異非小細胞肺癌の髄膜癌腫症患者の髄液または髄膜癌腫症のない患者の髄液と比較して高いレベルでアンフィレギュリンが検出された。 これらのことから、ALK肺癌の髄膜癌腫症患者においてALKとEGFRをターゲットとした治療戦略が有用であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において、マウス髄膜癌腫症モデルにおけるアレクチニブ耐性の耐性機序を解明し、その治療戦略を見出した。 我々はこれらの研究成果をまとめ、2020年1月に"Osimertinib overcomes alectinib resistance caused by amphiregulin in a leptomeningeal carcinomatosis model of ALK-rearranged lung cancer."というタイトルでJournal of thoracic oncologyに論文が掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では髄膜癌腫症モデルにおける第2世代のALKチロシンキナーゼ阻害薬の耐性機序を解明した。今後は第3世代のALKチロシンキナーゼ阻害薬に対する耐性の克服に着目し、研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に解析を予定しているため。
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