研究実績の概要 |
ガレクチンはβ-ガラクトシドへ特異的に結合し,細胞間情報伝達因子として機能する.ガレクチン-9(Gal-9)はT細胞やマクロファージ,樹状細胞の活性化を介し腫瘍免疫を賦活化する.これまで種々の癌でGal-9が直接的にアポトーシスを誘導することを報告してきたが,依然Gal-9の生理活性は未解明である.そこでGal-9の将来的な食道扁平上皮癌治療への応用を見据え以下の検討を行った【方法】1.食道扁平上皮癌細胞(KYSE150, KYSE180)にGal-9を添加し,細胞増殖アッセイを行った.2. KYSE150を用い異種移植モデルマウスを作成し,Gal-9を投与した. 3.Gal-9を添加した食道扁平上皮癌細胞株をフローサイトメトリーと比色分析法を用いて,アポトーシス誘導効果とカスパーゼ(-3, -4, -7, -8, -9) 活性を評価した.4.Gal-9投与後のミトコンドリア膜電位の変化を評価した.5.Western blottingでアポトーシス関連分子の動態とシグナル伝達経路について検討した【結果】Gal-9は,食道扁平上皮癌細胞株の増殖を濃度依存性に抑制した.また異種移植マウスモデルへのGal-9を投与により腫瘍増殖を有意に抑制した.Gal-9によりAnnexinⅤ陽性細胞の増加とcaspase-3の活性化を示し,ミトコンドリアの膜電位を消失させ,食道扁平上皮癌細胞のアポトーシスを誘導した.さらにGal-9はJNKとMAPKp38のリン酸化を誘導し,細胞質内ではcytochrome c, Smac/Diablo, HtrA2/omiの増加を認めた【結論】Gal-9は食道扁平上皮癌細胞株においてミトコンドリア経路のアポトーシスを誘導し,細胞増殖を抑制することをin vitro, in vivoで示した. その機序としてJNKやMAPKp38活性化の関与が示唆された.
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