研究課題/領域番号 |
19K16753
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
赤池 慶祐 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (60801719)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 骨軟部肉腫 / 組織型特異的遺伝子変異 / CAGE法 / プロモータ・エンハンサ / 発現プロファイルイング |
研究実績の概要 |
骨軟部肉腫の治療成績は依然極めて不良であり、「希少がん」であるが故に限られたデータ量や、それに伴う消極的取組みが影響し新規治療の開発が滞っている現状がある。軟部肉腫の研究は組織型特異的遺伝子変異(特に融合遺伝子:ユーイング肉腫_EWS/FLI1, 滑膜肉腫_SS18/SYT, 横紋筋肉腫_PAX3-FOXO1など)が発見され、各組織診断に有用なマーカーとなっている。しかしながら、未だ約60%の骨軟部腫瘍には組織特異的遺伝子変化は不明である。特に組織型頻度の高い紡錘型肉腫(spindle cell sarcoma)において未解明であり、UPS(Undifferentiated pleomorphic sarcoma:以前はMFH)と称される分化方向性が不明なものも多く含まれ、現在までに発生・発癌の因子も不明であり、診断はもとより治療法開発にも難渋しその解明が求められている。 近年開発された新規テクノロージーとして、各遺伝子に複数存在する転写開始点・プロモータ・それに伴うエンハンサの発現を網羅的精密発現に解析を可能としたCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法が開発されている。しかしながら現在までに、骨軟部肉腫においてCAGE法による解析は報告されていない。 本年度は、軟部肉腫手術検体24例に対してCAGE解析を行い、99,602個の転写開始点・プロモータ・それに伴うエンハンサの発現のプロファイルイングを獲得した。また骨肉腫抗がん剤耐性株に対して同様にCAGE解析を行い99,602個の転写開始点・プロモータ・それに伴うエンハンサの発現のプロファイルイングを獲得した。そのプロファイリングは現在解析中であり、その機能解析や検証実験は骨軟部肉腫の悪性度解明や新規治療法開発に繋がると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、順天堂大学で治療され検体を採取されている約100例の軟部肉腫の中で、解析可能であった紡錘形軟部肉腫24例について探索セットとして解析を行った。これは、計画書の目標としている40例と比較して、検体集積が遅れている。理由として、集積されている検体より抽出したRNAのうち、解析が可能な質のRNAを抽出する事が可能であった症例が限られていたためである。そのため、目標としている症例数のプロファイリングを行うためには、引き続き紡錘形軟部肉腫症例を集積を継続していく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
上記の如く、引き続き探索セット紡錘形細胞肉腫の症例集積を進める。順天堂大学の症例のみで目標症例数に到達できない場合は、国立がんセンターなどの共同研究施設にも症例提供の依頼を検討する。 既にプロファイリングを蓄積した24例については、組織型相互解析としては通常型平滑筋肉腫と多型平滑筋肉腫の比較では複数のプロモータがリストアップされ、多型平滑筋肉腫の方が通常型平滑筋肉腫よりも悪性度が高いことから、悪性度(形態学的な異型性にかかわるものを含む)に関わる遺伝子がリストアップされた可能性が考えられるなど、プロファイリングの解析が進んでいる。 今後も検証セットして更に紡錘型軟部肉腫のCAGE解析を行い、探索セット解析において同定されたその因子候補絞り込み、その同定された発現に関してはq-PCR, western-blot, 免疫染色の手法を用い大規模検証検体でそのバイオマーカーとして能力の検証を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までに行われているCAGE解析は、既に購入済みの試薬を使用してRNA抽出を行っており、本年度は試薬代の支出は計上しなかった。また、解析費用については、予定している全ての症例で解析が終了した時点で計上する予定である。 来年度以降、q-PCR, western-blot, 免疫染色等の、大規模検証時の試薬及び発がん性、悪性度、阻害剤効果のin vitro, in vivo機能解析を進める際の試薬費用とする予定である。
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