研究実績の概要 |
本研究では、各遺伝子に複数存在する転写開始点・プロモータ・それに伴うエンハンサの発現を解析するCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法を用いて、骨軟部肉腫における網羅的遺伝子発現プロファイリングを行っている。昨年度までに得られた24例の軟部肉腫検体を対象としたCAGE解析データをもとに、本年度は高悪性肉腫群(High-grade myxofibrosarcoma(HGMFS)および未分化多型肉腫(UPS))と高悪性度肉腫であるものの免疫染色により筋原性への分化が確認されるPleomorphic Leiomyosarcoma(pLMS)に注目し、両群間で遺伝子発現についての比較を行った。その結果、myostatinという筋肉の分化を負に司る遺伝子(ノックアウトのフェノタイプとしては筋肉の肥大がみられる)の発現がPLMS群において有意に低いことが確認された。さらに、HGMFS, UPS, PLMSの臨床病理検体を用いてmyostatinの免疫染色を行ったところ、HGMFS, UPSではびまん性の染色を認めた一方で、PLMSでは全く発現を認めない、あるいは部分的に発現を認めるのみであった。また、PLMSで部分的にmyostatinの発現を認めた症例については、Desminとmyostatinの二重染色を行ったところ、両者はほぼ相互排他的な発現を示すことを確認できた。以上より、myostatinは軟部肉腫の分化において、筋原性への分化に深く関与していることが推測された。
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