がん治療においては、がん細胞の薬剤耐性獲得が大きな問題となっている。がん細胞が薬剤耐性を獲得する際には、がん細胞自身の変化だけでなく周囲の間質細胞との相互作用が重要であることが報告されている。しかし、腫瘍内のどのような環境で薬剤耐性細胞が出現しているかは不明である。本研究では、マルチカラー蛍光イメージングを用いて薬剤耐性細胞の出現に関連した腫瘍微小環境について明らかにすることを目的とした。これまでに、実験に使用する細胞株の作成、腫瘍組織中の可視化方法、in vitroにおいて間質細胞ががん細胞の薬剤感受性に与える影響ついて検討した。まず、RGBマーキングと呼ばれる手法を用いてがん細胞の標識に着手した。EML4-ALK陽性肺がん細胞株に、レンチウィルスを用いて異なる3つの蛍光タンパク質遺伝子を導入した。その結果、がん細胞が様々な蛍光色で区別可能であることを確認した。さらに、個々の細胞の区別を簡易化するために、各蛍光タンパク質に核移行シグナル配列を付加したコンストラクトを作成した。同様にがん細胞を標識し観察した結果、細胞核が様々な蛍光色で標識され、容易に細胞同士を区別できることを確認した。次に、腫瘍組織内において線維芽細胞血管内皮細胞を免疫組織染色により検出するために、免疫細胞染色およびウェスタンブロット法により抗体の評価を行なった。その結果、抗alpha-SMA抗体および抗CD31抗体をそれぞれ線維芽細胞および血管内皮細胞の検出に使用することとした。in vitroでRGBマーキングにより標識したEML4-ALK陽性肺がん細胞のALK阻害剤感受性が、線維芽細胞や血管内皮細胞との共培養より低下することを確認した。今後、作成した細胞を使用して生体内における薬剤耐性獲得と腫瘍内微小環境との関連について、間質細胞の分布等の空間的情報に着目し解析を進める。
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