研究課題
AYA世代のがんである骨肉腫の肺転移症例は極めて予後不良である. 手術とともに周術期抗がん剤治療が標準治療となるが, 現行の抗がん剤からの発展がなく, さらに副作用の点からも新規分子標的薬の可及的早期開発が望まれる.一方,本研究で着目したApoptosis signal-regulating kinase 1 (ASK1)は様々ながんのoncogeneとして腫瘍の局所進展を制御しており,悪性黒色腫の肺転移をASK1が制御していることも報告されている.現在,骨肉腫の腫瘍進展および肺転移におけるASK1を含めたレドックス制御について研究を進めている.まず,in vitroにおいてマウス高肺転移細胞株であるLM8を用いてMTT assayおよびwestern blottingにて検討を進めた.ASK1をノックダウンしたところ72時間経過時のMTT assayにてLM8の腫瘍増殖を促進した.また,ASK1の恒常的抑制タンパク質であり、レドックス制御のkey moleculeであるチオレドキシン(Trx)にも着目した.Trx阻害剤であるPX-12をLM8に投与したところ,濃度依存的および時間依存的にLM8の増殖を顕著に抑制した.ウェスタンブロッティングにてアポトーシス関連タンパク質を評価したところ,アポトーシスが亢進していることが示された.in vivoにおいては,まずは予備実験としてLM8をC3H/Heマウスの皮下に移植し,腫瘍が局所増大および肺転移が生じることを確認した.また,並行してヒト手術検体からの初代培養細胞樹立の手技確立を試みている.
3: やや遅れている
新規の研究であるため基礎研究の設備および手技の確立に時間を要した.また骨肉腫細胞株におけるASK1の機能解明などの質的評価は進んでいるが,細胞株でのASK1の発現量が非常に少なく,量的評価に時間がかかっている.また,ASK1のノックダウンにより骨肉腫細胞株の増殖を促進する可能性も示唆されたことから,ASK1がアポトーシスを介し骨肉腫の増殖を抑制することも考えられ,これに関しては当初の仮説をやや覆すものであった.研究の方向性の立て直しなども含めて予定より時間を要した.
上記のように骨肉腫におけるASK1の関与の検討ととものTrxの検討も並行して進めている.まずはin vitroにおいてLM8に対するASK1阻害剤とともにTrxノックダウンの効果をMTT assay, Collagen assayおよび下流のp38, JNKやアポトーシス関連タンパク質であるCaspaseなどの評価をウェスタンブロッティングにて行う.さらにTrx還元酵素阻害剤にも着目し同様の検討を行う予定である.また,in vivoにおいてはまずはLM8をマウスに移植し,ASK1およびTrx阻害剤,Trx還元酵素阻害剤の局所増悪および肺転移への効果を肉眼的所見およびウェスタンブロッティングや免疫染色にて評価する.その後にヒト細胞株における評価およびヌードマウスへの移植にて阻害剤の効果を検討する予定である.
試薬費等として全額使用予定だったが、研究所の試薬でもまかなえるものも数多くあり残金が生じた。翌年度以降は研究所にない試薬や物品を用いる予定であり、請求分の助成金とあわせ試薬等購入の予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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