研究課題
前年度に引き続き、Trx阻害剤であるPX-12の骨肉腫細胞株への効果の検討を進めた。まずはin vitroにて高肺転移細胞株であるLM8に対しPX-12を投与し分子機序解明を行った。incucyteを用いた評価では、PX-12低容量で経時的に腫瘍増殖が抑えられ、TrxノックダウンでもMTT assayにて腫瘍増殖が抑制された。PX-12投与にて時間依存的にp38およびJNK、Caspase-3の活性化が誘導されることをウェスタンブロッティングにて確認した。Caspase 活性試験においてもPX-12投与にて活性化されていることを確認し、Caspase阻害剤であるZ-VAD-FMK前処置にてPX-12によるLM8の細胞死が抑制された。さらに酸化ストレスの関与を検討するために、抗酸化ストレス剤であるN-Acetyl-L-cysteine (NAC)前処置にてMAPKおよびCaspase-3の活性が減弱することをウェスタンブロッティングにて確認した。MTT assayにてNAC前処置で細胞死が有意に抑制されることを確認した。さらに遊走試験ではPX-12の投与12、24時間時にLM8の遊走が有意に抑制されることをWound Healing Assayで確認した。続いてin vivoではLM8をC3H/Heマウスの背部皮下に移植し、PX-12を連日腹腔内投与し、局所腫瘍への抗腫瘍効果を検討した。PX-12投与群においてコントロール群と体重に変化は認めなかったが、薬剤投与した4週間、PX-12群では経時的に腫瘍増大を有意に抑制し、摘出時の重量でも有意に抑制した。また、バイオインフォマティクスを用い、ヒト骨肉腫症例におけるTrx発現と肺転移および生存率の関係を検討したところ、Trx高発現症例では有意に肺転移が多く、生存率も悪かった。
3: やや遅れている
前年度に引き続き、当初の予定通りApoptosis signalregulating kinase 1 (ASK1)の関与の検討を進めたが、ASK1阻害剤では骨肉腫細胞株の細胞死は誘導されず、ASK1は骨肉腫細胞株ではむしろアポトーシスを介し、細胞死を誘導する可能性が示唆され、ASK1阻害剤を新規治療薬として検討することは困難であると判断した。そこでASK1を恒常的に阻害するTrxに着目して検討を進めている。Trx阻害剤であるPX-12の検討ではマウス骨肉腫細胞株を用いたin vitroおよびin vivoにおいて比較的順調に研究は進んでいる。検討内容の変更を行ったために進捗状況はやや遅れている。
上記のようにマウス骨肉腫細胞株を用いたin vitroおよびin vivoの検討は終了間際であり、結果が出次第早急に論文化する予定である。今後はヒト骨肉腫細胞株およびヒト骨肉腫検体を用いた検討を早急に進める。また、Trx還元酵素阻害剤であるAUR(オーラノフィン)にも着目し並行して検討を進めており、こちらもマウス細胞株での結果が揃い始めている。AURに関してもヒト骨肉腫検体を用いた検討に移行する予定である。
2020年度は2019年度の実験の遅れを取り戻すために、試薬を購入し実験を継続し、概ね順調に進んだが、それでもヒト細胞株での実験までは到達しなかったために、残高が生じた。翌年度以降請求分の助成金とあわせ物品購入の予定。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Case Rep Orthop.
巻: 2020 ページ: 4753027
10.1155/2020/4753027
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10.31616/asj.2019.0048
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巻: 2020 ページ: 5380598
10.1155/2020/5380598
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10.1155/2020/6316921