研究課題/領域番号 |
19K16760
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研究機関 | 千葉県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
木下 英幸 千葉県がんセンター(研究所), 整形外科, 医長 (50797115)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 骨肉腫 / チオレドキシン (Trx) / レドックス / PX-12 / オーラノフィン (AUR) / Trx還元酵素 (TXNRD) |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、Trx還元酵素(TXNRD)阻害剤であるオーラノフィン(AUR)の骨肉腫細胞株への効果の検討を進めた。まずはin vitroにて高肺転移細胞株であるLM8に対しAURを投与し分子機序解明を行った。incucyteを用いた評価では、AUR低用量で経時的に腫瘍増殖が抑えられた。AUR投与にて時間依存的にp38およびJNK、Caspase-3の活性化が誘導されることをウェスタンブロッティングにて確認した。Caspase 活性試験においてもAUR投与にて活性化されていることを確認し、Caspase阻害剤であるZ-VAD-FMK前処置にてAURによるLM8の細胞死が抑制された。さらに酸化ストレスの関与を検討するために、抗酸化ストレス剤であるN-Acetyl-L-cysteine (NAC)前処置にてMAPKおよびCaspase-3の活性が減弱することをウェスタンブロッティングにて確認した。MTT assayにてNAC前処置でAURによる細胞死が有意に抑制されることを確認した。さらに遊走試験ではAURの投与12、24時間時にLM8の遊走が有意に抑制されることをWound Healing Assayで確認した。続いてin vivoではLM8をC3H/Heマウスの背部皮下に移植し、AURを4週間連日腹腔内投与し、局所腫瘍進展および肺転移への抗腫瘍効果を検討した。AUR投与群においてコントロール群と体重に変化は認めず、局所においても腫瘍進展を抑制しなかった。しかしながら興味深いことにAUR群ではコントロール群と比較し、肉眼的肺転移結節数を有意に抑制し、病理学的評価においても有意に抑制した。さらにバイオインフォマティクスを用い、ヒト骨肉腫症例におけるTXNRD発現と肺転移および生存率の関係を検討したところ、TXNRD高発現症例では有意に肺転移が多く、生存率も悪かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度のPX-12に続きAURの検討および論文化も進んでいるが、ヒト骨肉腫手術検体を用いたPatient-derived xenograft(PDX)の作成に時間がかかっている。現時点ではヌードマウスへの生着率が低く、今後のPDXを用いた研究のために生着率を上げるべく、条件検討を行なっている段階である。また生着したマウスでも肺転移が生じる時期などの検討を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
骨肉腫細胞株を用いたPX-12とAURの局所および肺転移の評価はほぼ完了したが、Patient-derived xenograft(PDX)での検討が生着率の問題により難渋している。まず生着率を上げるべく、移植する組織量や大腿四頭筋の移植部位、移植する層などについて早期に検討を行う。また、PDXでも肺転移への評価を行うことから、肺転移の時期、および薬剤の投与形態・方法についても検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は2019-2020年度の実験の遅れを取り戻すために、試薬を購入し実験を継続し、概ね順調に進んだが、それでもヒト組織検体を用いたPDXでの実験完了までは到達しなかったために、残高が生じた。来年度に物品購入の予定。
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