本年度は骨肉腫細胞株を用いたレドックス制御の解明とヒト骨肉腫手術検体を用いたPatient-derived xenograft(PDX)の作成を並行して進めた。骨肉腫細胞株の検討では、前年度に引き続き、Trx還元酵素(TXNRD)阻害剤であるオーラノフィン(AUR)の骨肉腫細胞株への効果を検討した。前年度の検討ではAURは肺転移を有意に抑制するが、局所進展に関しては抑制はするものの有意差はなかった。他の癌腫ではAUR単独では効果が乏しく、酸化ストレス誘発剤併用によるシナジー効果が報告されている。整形外科領域で頻用する薬剤で、かつ抗がん剤ではない薬剤を検討し、COX-2選択的阻害剤であるセレコキシブに注目した。まずはin vitroにて高肺転移細胞株であるLM8に対し、AURとセレコキシブ併用により濃度依存的にLM8の細胞死および増殖を抑制した。ウェスタンブロッティングではMAPKおよびCaspase-3の活性化が誘導されることを示した。続いてin vivoではLM8をC3H/Heマウスの背部皮下に移植し、AUR単独およびAURとセレコキシブ併用投与を行い、局所腫瘍進展および肺転移への抗腫瘍効果を検討した。AUR投与、AUR/セレコキシブ併用群においてコントロール群と比較し体重に変化は認めなかった。局所進展に関しては、コントロール群と比較し、AUR群では抑制効果は認めるが有意差はなかった。一方、AUR/セレコキシブ併用群では有意に抑制した。肺転移に関してもAUR/セレコキシブ併用群にて有意に抑制した。ヒト骨肉腫手術検体を用いたPDX作成においては、骨肉腫検体および軟骨肉腫検体のPDX作成に成功した。現在、局所の増大した腫瘤を第1世代として継代を行っているところである。一方、肺も含めた他臓器への遠隔転移は認めなかった。
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