研究実績の概要 |
Retinoic acid receptorα(RARA)転座陰性の急性前骨髄球性白血病の症例について、さらにゲノム解析を進めた。RARA転座がFISHで検出されなかったAPLの症例2例に対し全ゲノム解析を行った。 1例は、TBL1XR1-RARAが検出され、ゲノム構造の詳細な検討を行い、FISH法で転座を検出できなかった微細なゲノムの構造異常で融合遺伝子が生じていることを明らかにし、報告を行った(Osumi T et al. Genes Chromosome Cancer 2019) もう一例では、新規融合遺伝子であるHNRNPC-RARBを検出した。HNRNPC-RARBの全長をクローニングし、既報(Osumi T, Tsujimoto S, Kato M et al.Cancere Research.2018)の手法を用いて、TBL1XR1-RARB融合遺伝子と同様に、①融合遺伝子自身が2量体を形成し白血病の病態に関与すること、②APLの治療薬であるATRA, Am80といった薬剤について効果がないことを確認し、報告を行った(Yoshida K et al.The 81st Annual Meeting of the Japanese Society of Hematology) RARA転座陰性APLは、非常にまれな疾患であるため、日本小児がん研究グループ(JCCG)及び成人白血病治療共同研究機構(JALSG)にて症例の収集を呼びかけ、RARA転座陰性APLの臨床上の特徴について収集の体制を整えた。 次にRARB転座陽性APLの治療薬の検討及び病態の解明について検討を行った。治療薬については、ATRA、Am80といったAPL治療の中心的な薬剤が、無効なことを示し、他のレチノイン酸経路に関わる薬剤(Tazarotene、Isotretinoin、Alitretinoin、Acitretin、Bexarotete)についてルシフェラーゼアッセイ法や共免疫沈降法をもちいたスクリーニングを実施している。また、colony replating assay法を用いて、HNRNPC-RARBの機能解析を進めている。
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