研究課題/領域番号 |
19K16762
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
辻本 信一 横浜市立大学, 医学部, 助教 (50838034)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TBL1XR1-RARB / APL / retinoic acid pathway |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度まで進めていたRARA転座陰性APの症例集積を実際に行った。日本小児がん研究グループ(JCCG)及び成人白血病治療共同研究機構(JALSG)にて症例の収集を呼びかけ、RARA転座陰性APLの臨床上の特徴について収集を行った。成人のRARA陰性APLは10例程度収集できる可能性があることが一次調査で判明したため、現在二次調査を行っているところである。 また、新規小児AMLの臨床試験では、このRARB転座陽性APLの一群をリスク層別化の一つとして採用することができた。 次にRARB転座陽性APLの治療薬の検討及び病態の解明について検討を進めた。治療薬については、昨年度までで、ATRA、Am80といったAPL治療の中心的な薬剤が効果がないことを報告し、本年度は、他のレチノイン酸経路に関わる薬剤(Tazarotene、Isotretinoin、Alitretinoin、Acitretin、Bexarotete)が有効であるという仮説をたて、ルシフェラーゼアッセイ法や共免疫沈降法をもちいたスクリーニングを実施した。しかし、これらの薬剤はいずれもTBL1XR1-RARB陽性のAPLに対しては、無効であることがわかった。そこで、TBL1XR1-RARB及びコントロールとしてPML-RARAを導入した臍帯血を用いてRNAシークエンスを行い、治療標的となりうる候補遺伝子の同定をおこなった。その結果、遺伝子Xが候補としてあがった。この候補遺伝子XはTBL1XR1-RARBを導入した細胞で有意に発現が低下していることがわかった。この遺伝子Xについては、ligand薬がすでに実臨床に用いられていることから、この遺伝子Xのligand薬の有効性及びATRAなど現在APLに使用されている既存薬の併用の有効性について現在検討をすすめているとことである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
RARA陰性APLは、非常に希少な疾患であることから全国規模での症例の収集が必要であり、その準備が昨年度終了し、今年度は一次調査を終了し、二次調査へと移行することができた。 RARB陽性APLに対する新規治療薬の同定については、ATRA、Am80といった薬剤以外のレチノイン酸経路に有効な薬剤について検討を行ったが、いずれも無効であった。しかし、RNAシークエンスの結果、新たな標的を同定することができ、現在その有効性について検討を行っているところである。この成果については、本年度の学会で報告する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
RARA転座陰性APLの臨床情報の収集については、二次調査を含め臨床像の評価並びに検体が収集可能である症例は、ゲノム解析を進めていく予定としている。 新規薬剤の開発については、同定された新規候補遺伝子に対する薬剤を用いて、in vitro/in vivoでの評価を行っていくことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、コロナウイルス感染症の影響などを受け実験計画は年度後半にはすすめることができ、一定の成果を治めることができたものの、最終的な実験計画の遂行の見通しが厳しくなったため、2021年度に一部の計画を移行し遂行することとした。
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