研究課題
2021年度は2019年に報告した論文をさらに発展させて、オルガノイド増殖抑制アッセイや、がん関連繊維芽細胞、リンパ球との共培養などを行い、それぞれに肺癌3Dオルガノイドが有用かどうか検討した。結果はリンパ球との共培養に関しては、培地であるマトリジェルを通過してオルガノイドへ浸潤した腫瘍浸潤リンパ球を確認することができず、実際の腫瘍周囲の微小環境を評価することは出来なかった。リンパ球の抽出法や、培養法に関してまだ検討する課題が多く、免疫系の実験への応用には数多くのハードルがあることがわかった。一方で、オルガノイド増殖抑制アッセイや、がん関連繊維芽細胞の培養に関しては高い成功率を維持しており、今回、オルガノイド増殖抑制アッセイを用いて、BRAF遺伝子変異陽性細胞株に対するEGFRチロシンキナーゼ阻害薬の効果判定を行い、その機能解析を行った。これは、以前行った2Dモデルでの解析を肺癌3Dオルガノイドでも再現可能か確認したもので、結果を世界肺癌学会で報告し、英文誌へ投稿した(J Thorac Oncol. 2022 Feb;17(2):277-288.)。本研究の目的は、肺がんのトランスレーショナルリサーチ(橋渡し研究)、個別化医療に資する新規実験手法の開発とその実験手法の確立を目指すことである。研究期間を通して、肺癌3Dオルガノイドを用いた新規実験手法をある程度確立させることができた。また、その実験手法を用いて、2Dモデルと同様の実験結果が得られることが証明され、今後の臨床応用に向けても非常に重要性が高い研究であったと考える。免疫療法を除く、肺癌の治療効果判定や、遺伝子変異の機能解析などに応用が可能であり、研究を継続していきたいと考えている。
すべて 2022
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J Thorac Oncol
巻: 17 ページ: 277-288
10.1016/j.jtho.2021.09.008