研究課題/領域番号 |
19K16765
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
眞野 恭伸 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (80577362)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 癌 / Notchシグナル / TGF-βシグナル |
研究実績の概要 |
RASシグナルの活性化およびTGF-βシグナルの不活化は、膵臓癌、大腸癌、胃癌などの様々な癌種において認められる。このRASシグナルの活性化とTGF-βシグナルの不活化のクロストークによる発癌の分子機序は、炎症とTGF-βシグナル遮断の相互作用により浸潤・転移が誘導される事が明らかにされたが、その詳細な分子機構は不明な点が多い。 本研究では、RASシグナルの下流であるNotchシグナルの老化誘導機構に着目し解析を行う事でNotchシグナルの活性化とTGF-βシグナルの不活化の相互作用による癌浸潤機序の解明を目的としている。2019年度は①単一細胞での網羅的遺伝子発現解析によるNotchシグナルの活性化とTGF-βシグナルの不活化のクロストーク癌浸潤機構の解明. ②RASシグナル活性化+TGF-βシグナル不活化癌臨床標本でのNotchシグナル関連因子の検証. について解析を行った。 ①では、まずTGFBR2のKDによりJAG1強制発現による老化誘導を回避した細胞に関してRNA-Seqを行った。その結果、JAG1強制発現かつTGFBR2をKDした細胞では、細胞老化誘導時におけるp21 及びp15の発現上昇が抑制されており、その結果老化を回避しているのではないかと考えられた。さらにJAG1活性化かつ老化誘導を回避した細胞と正常細胞を共培養し、タイムラプス解析を行った。その結果、JAG1活性化かつ老化誘導を回避した細胞が正常細胞を巻き込みながら増殖し、正常細胞に老化を誘導していく様子が確認された。 ②では、公共データベースThe Cancer Genome Atlasの膵臓癌のデータを用いて統合解析を行い、KRAS(+)とTGF-βシグナルに変異が認められる膵臓癌において特異的に発現上昇している遺伝子群を抽出した。今後、その候補因子が癌浸潤機序に重要であるかを検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度に予定していた研究計画の中でシングルセルでの遺伝子発現解析が少し遅れ気味ではあるが、代わりにタイムラプス解析などで良好な結果が得られている。そのため全体としては、おおむね順調に進行している。また公共データベースを用いた解析からKRAS(+)とJAG1の発現との相関性を認めており、今後も公共データベースと当研究室で解析したNGSデータを統合解析する事で、Notchシグナルの活性化とTGF-βシグナルの不活化のクロストークによる癌化機序の理解が可能になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、以下の研究計画を予定している。 ①単一細胞での網羅的遺伝子発現解析によるNotchシグナルの活性化とTGF-βシグナルの不活化のクロストーク癌浸潤機構の解明. ②RASシグナル活性化+TGF-βシグナル不活化癌臨床標本でのNotchシグナル関連因子の検証. ③Notchシグナル関連因子を標的とした浸潤機構の阻害による臨床応用への検証実験. に関して解析を実施していく。 ①に関しては共培養時のシングルRNA-Seqまたはセルソーティングした細胞でのRNA-Seqを行う。②に関しては抽出した重要因子候補に関して、癌浸潤機構に寄与しているかを検証する。また③に関してはNotchシグナル亢進癌に対してNotchシグナル阻害剤のGSI(γ-secretase inhibitor)を用いて浸潤能の阻害を検証する。 以上の研究計画により、Notchシグナルが関連した癌の浸潤機構を解明する事で、RASシグナルの活性化とTGF-βシグナルの不活化の相互作用による発癌機序を明らかにする予定である。
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