研究課題/領域番号 |
19K16776
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
田中 智和 佐賀大学, 医学部, 助教 (60781903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ファルネシル転換酵素阻害薬 / NAFLD/NASH肝癌 / HIF-1α |
研究実績の概要 |
①肝細胞癌細胞株であるHepG2、Hep3B、HuH-7を使用した。まず、これらの細胞においては、常酸素環境下でHIF-1αが発現していることが確認された。 ②上記3種の細胞株にファルネシル転換酵素阻害薬 (FTI) を投与(24時間暴露)したところ、いずれの細胞株においても濃度依存性にHIF-1α発現が抑制された。 ③炎症惹起モデル (サイトカインカクテル:TNFα+IFNγ+LPS添加) および脂肪滴産生モデル (パルミチン酸添加) におけるFTase(ファルネシル化における転換酵素)の変化の評価を行った。いずれのモデルにおいても、3種の細胞株で FTaseの発現増強が確認できた。さらに、サイトカインカクテルの投与あるいはパルミチン酸添加によってHIF-1α発現も同様に増強されたが、FTIの投与によって強力にreverseされた。同様に、NF-κB活性もサイトカインカクテルの投与あるいはパルミチン酸添加によってHIF-1α発現も同様に増強されたが、FTIの投与によって強力にreverseされた。なお、ファルネシル化が確かに阻害されているかの検証にHDJ2蛋白のウエスタンブロットを用い、ファルネシル化の確実な阻害を確認した。サイトカインカクテルおよびパルミチン酸の濃度の投与条件の設定に時間を要した。 ④NAFLD/NASH肝癌モデルとして”STAMマウス”を用い、FTIによるNAFLD/NASHの発癌抑制効果およびNAFLD/NASH肝癌に対する抗腫瘍効果の検証を試みた。まず、抗腫瘍効果評価を目的に肝癌形成後(既存データより推定)にFTIを投与し、腫瘍数やサイズなどを評価した。現在、最終的なFTI投与経路や投与開始時期の検討を行っている途中であるが、これまでのデータでは、FTI投与によって腫瘍形成個数減少やサイズ縮小が期待できるデータが得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
in vitroの実験系の遂行により、着実に実験データが積み重ねられている。また、概ね仮説に矛盾しない実験結果が得られており、当初の申請書の研究計画に従って進行している。これまでに得られたデータに関して、本年度の全国学会で発表予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、in vitro実験として上記モデルにおけるインスリン抵抗性 (IGF/IGF-1受容体シグナル、PTP-1B、PTENなど)、酸化ストレス (活性酸素測定、酸化的リン酸化の評価、アディポカインおよびレプチン測定、ミトコンドリアの形態的・数的変化など)、アポトーシス (チトクロームCの放出、Caspase-3やPARPの評価など)、さらにオートファジー (p62/Keap1/Nrf2経路、LC3の評価など) への影響を検証していく。さらに、それらに対するファルネシル転換酵素阻害薬 (FTI) による是正効果を検証していく。一方、in vivo実験として上記実験の最終的な条件設定を行い、肝癌形成後の抗腫瘍効果について再現性を確認する。また、発癌抑制効果の評価を目的としたFTI投与スケジュールでの実験を開始する(肝癌形成前にFTIを投与)。さらにNAFLD/NASHモデルとしてMCD試料 (メチオニン・コリン共に完全欠乏) モデルマウスを用いてFTIによるNAFLD/NASHに対する治療効果の検証を予定したい (マウス体重や脂肪沈着、風船様腫大などのNAFLD/NASHに特徴的な病理所見を評価)。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施予定であったin vitro時間および動物実験を次年度に延期したため、これらを当初予定していた次年度の研究計画に加える。
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