これまでに卵巣癌の腫瘍間質,特にホルモン産生能を伴う機能性間質に着目した研究はわずかしかなかった.我々は,機能性間質を伴う卵巣癌を14例同定して,手術前後の血清エストロゲン値やFSH値の変化から,卵巣腫瘍のエストロゲン産生能とフィードバック機構を確認した.また1例のみであったが卵巣癌上皮と機能性間質に同一のKRAS遺伝子変異がみられ,両者が同一の細胞由来である可能性を見出した.従来から使用されている化学療法は癌細胞自体を標的とするものが多いが,本研究が発信した腫瘍間質の遺伝子変異やその由来の仮説は,腫瘍間質や癌微小環境を標的とする治療開発の一助になると考えられる.
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