研究課題/領域番号 |
19K16780
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
中井 克也 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10384108)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乳癌 / Triple Negative乳癌 / 上皮増殖因子受容体 / 抗体薬物複合体 / 効果予測因子 / アルギニン・メチルトランスフェラーゼ |
研究実績の概要 |
我々の研究の初年度における成果としては,EGFRがTN(Triple Negative)乳がんでメチル化されているかどうかを判断するために,さまざまなTN乳癌細胞株(HCC38、HCC1937、468、BT-549、Hs-578T、MDA-MB-436、MDA-MB-231、および453)R198 /200でメチル化されたEGFRに対する特異抗体を使用したウエスタンブロット分析を行った.またこれらの細胞株においてEGFRとPRMT1の発現をウエスタンブロット分析で調べた.TN癌細胞株についてはTN乳癌を3つのサブグループに分割し調査した(基底様:HCC38、HCC1937,およびMDA-MB-468,間葉系:BT-549,Hs-578、MDA-MB-436、およびMDA-MB-231、ならびに内腔AR: MDA-MB-453).コントロールとして、ER陽性管腔細胞株、MCF-7およびT47Dについても行った. さらにTNBC細胞株の1つであるMDA-MB-468においてPRMT1のノッツクダウン細胞MDA-MB-468 shPRMT1細胞を作成した.TN乳癌細胞株においてEGFRのメチル化がPRMT1によりコントロールされていることが示唆された.EGFRのリン酸化と下流のシグナルについて検討した結果,MDA-MB-468 shPRMT1細胞においてEGFRのリン酸化の低下と下流のシグナルであるAKT,ERK,STAT3のリン酸化の低下を確認することができた.TN乳癌においてEGFRを対象としたADC治療は大きな期待ができるところであり,今回の研究の大きな目的でもある癌細胞のEGFRのメチル化状況が治療効果の効果予測因子である可能性について研究継続を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている.臨床業務が多忙を極めていること.In vitroの実験が臨床業務終了後となることより研究時間が限られていることが主な要因である.また3月より研究棟の利用時間の制限がある.今回の研究で重要となる抗EGFR抗体にリンカーで抗腫瘍薬を結合させたADCであるDepatuxizumab Mafodotin(ABT-414)の調達に難渋している.その他のmatuzumab(EMD 72000)等の他の薬剤も模索中であるが臨床試験が終了したものもあり同様に難航中である.抗EGFR抗体であるセツキシマブにドセタキセルを結合させたADCが,Kutttyら(Department of Chemical and Biomolecular Engineering, National University Singapore)により作成されていることより,この入手について現在交渉中である.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である,抗体薬物複合体(Antibody-Drug Conjugate:ADC)の効果がEGFRのメチル化によって抗体部の親和性の違いに注目することで治療予測因子としての可能性についても検索を進めていく.EGFRのメチル化に係るアルギニンメチル基転移酵素(RMT1)阻害剤は癌治療におけるエピジェネティク治療の応用として非常に注目されており,EGFRメチル化を制御することで,ADCのEGFRに対する親和性を高めることにより,PRMT1阻害剤が魅力的な治療的戦略になる可能性についても検索を進めていく.また人体サンプルを使った免疫組織学的検査によりTNBCにおけるEGFRのメチル化の状況を明らかにすることで臨床応用時の治療対象群を試算する.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れがあり,来年度の実験に使用する予定.試薬及び抗体購入に使用する予定.
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