研究課題/領域番号 |
19K16782
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
清水 幹容 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (00774358)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | がん幹細胞 / cancer stem cells / IL-8 / O-GlcNAc |
研究実績の概要 |
がん幹細胞はがんの転移、再発、薬剤耐性などの原因とされる細胞集団であり、特殊な培養方法により作製されたスフェロイドと呼ばれる細胞集団は、がん幹細胞としての能力をもつと考えられている。これまでの研究からスフェロイドから炎症性ケモカインであるIL-8が大量に分泌されていること、大量のIL-8ががん幹細胞の機能に重要であることを明らかにしている。一方で、全てのがん幹細胞がIL-8により制御されているわけではないことも示された。本研究では、シングルセル化と網羅的な遺伝子発現解析によりIL-8依存的に制御される集団を特定することで、がん幹細胞を標的とした新たなバイオマーカーの発見を目的としている。 本年度はシングルセルでの網羅的な解析により明らかとなった各グループでの特徴的な遺伝子群の解析を行った。特徴的な遺伝子を発現する細胞集団をセルソーターで回収し、がん幹細胞の発生状況を解析したが、各グループ間で大きな差は確認できなかった。引き続き遺伝子の選出を行い、「IL-8依存的に制御されるがん幹細胞集団」の同定を試みている。 また研究の副次的な結果として、発がん性シグナルによるがん幹細胞発生機構を明らかにした。がんにおいて頻発するRAS遺伝子の変異が下流のシグナル伝達経路であるMAPK経路を活性化することで、細胞周期制御因子CDK1の活性化と翻訳語修飾O-GlcNAc化を誘導し、幹細胞因子SOX2の発現を制御することでがん幹細胞が生じることを発見した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-8受容体CXCR2の発現に依存的なサブグループを同定し、各グループ内で特徴的な遺伝子を選出したところ、興味深い遺伝子が含まれていることがわかった。現在、それらの遺伝子に着目して研究を行っているが、結果はあまり芳しくない。そのため、科研費の補助事業期間を延長し、引き続き解析を行う予定である。したがって、進捗状況はやや遅れていると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
科研費の補助事業期間を延長し、シングルセル解析で明らかとなった各グループ間で特徴的な遺伝子群を引き続き選出する。それぞれの細胞集団をセルソーターで回収し、がん幹細胞の発生状況を解析する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
科研費補助期間は2021年度までだったが、研究の進捗状況の関係から期間を延長したため、次年度使用額が生じた。延長期間中に引き続き解析を行うため、必要な試薬など主に物品費として使用する予定である。
|